エビデンスの否定
Medical Tribuneに配信されたアメリカのUniversity of New MexicoのRobert DuBroff氏らがBMJ Evid Based Med(2020年8月3日オンライン版)に報告した内容は、マスコミの報道次第では、たぶん臨床現場の医師と患者さんたちを右往左往させる報告になるでしょう。
心血管疾患の中等度~高リスク患者に対して、多くの治療ガイドラインがコレステロール低下薬による治療を推奨しているけれど、きちんと再検討してみると、「全試験の4分の3で死亡に対するベネフィットが得られず、半数で将来の心血管リスクに対するベネフィットが得られていなかった」だけでなく、「目標が達成できなかった22件のうち死亡に対するベネフィットは4件、CVDに対するベネフィットは14件で報告されており、ベネフィットが得られた割合はLDL-C低下目標が非達成の試験でむしろ高かった」というのです。
簡単に云えば、「動脈硬化の危険因子であるLDLコレステロールを薬剤を使ってしっかりと下げても、心血管疾患の予防には寄与していない可能性がある」という結論のように思われます。”The Lower, The Better(低ければk低い方が良い)"の概念を覆す内容なだけに、かなりセンセーショナルな報告のように思われます。コレステロール治療論争にますます拍車がかかることは間違いなさそうですが、一番怖いのは、まだ何の結論も出ていないのに、興味を持ったマスコミの記者たちが面白い話題だとばかりに中途半端に取り上げることだと思います。
そもそも、LDLコレステロールが多すぎれば動脈硬化を来すために”悪玉コレステロール”と呼ばれるわけですが、生活習慣に関わりなく体質的に多い人は多いし、女性では閉経以降に必ず増加する物質なわけで、「普通に生きていて人間の体内に生存に不要なモノは溜まるはずがないのではないか」というわたしの想いがあります。太古の時代から閉経以降には上昇するのだから、そんな人はその方が生きていく上で有利だからそうなっているのではないか。つまり、生活習慣の乱れで本来溜まるはずのないLDLコレステロールが体内に溜まっている人と、LDLコレステロールが体内に多いことで不利益をもたらさない体質の人とを一緒くたにして平均点で語ろうとすることに無理があるのではないか?と思っているわたしです。
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