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そんなことはない?

先日、わたしが人間ドックを担当している壮年男性が1年ぶりに人間ドックを受診されました。彼は昨年、循環器内科の外来を受診して無症候性心筋虚血(典型的な症状はほとんどないけれど心臓の筋肉を栄養している冠状動脈の血流が落ちて十分な酸素が心臓の筋肉に届かない状態が起きていること:症状があれば『狭心症』か『心筋梗塞』です)が見つかったので、カテーテル治療(ステント留置術)を受けました。

その彼は長年とても頑固な頭痛に悩まされていたのですが、このカテーテル治療を受けた後、ウソのように頭痛が消えたのだそうです。何年ぶりかで爽快な気分になって、外来受診時に、「ありがとうございます。おかげさまであの治療のおかげで頭痛がなくなりました」と外来主治医に話したら、若い医者は「そんなことはありえない。関係ないよ」と一笑に付したのだそうです。

本人は苦笑いしながら冗談交じりにそんな話をしてくれましたが、わたしはそれを聞くなり、「その医者はなんでそんな云い方したんだろう?」と思いました。「へえ、そんなこともあるんですね。不思議だけど、それはラッキーでしたね」って云っておけばいいことじゃないの、と。治療で冠状動脈が拡張されたことそのものが頭痛に影響を与えることはないかもしれないけれど、それに付随した薬剤はたくさん加わったのだし、心筋血流改善がひいては全身の血管系の血流を改善させることになっても何ら不思議はない。別に因果関係に興味が無くても、現象として起きた朗報は一緒に喜ぶ余裕は欲しいよな、とか思ったりしました。

甲状腺全摘治療を受けて甲状腺ホルモン内服で管理している妻は、自律神経系の諸症状が術前より激しくなったり、今まで反応したことのないものでアレルギーが出たり、まあまあいろいろ悩まされています。でも、外来主治医に話してもほとんど鼻で笑われるのだそうです。「そんなこと聞いたこともない」と。「あんた、自分で飲んだことがないから分からないんだよ。何なら試しに甲状腺全摘して内服してみなよ。そしたら、わたしの云ってることがどういうことか実感できるさ、と云ってやりたい!」と、声を荒立てながらわたしに愚痴る愚痴る。でも、そんな彼女の様子をみるにつけ、身体の反応は必ずしも理論通りではないのだろう、ということを理解しております。

こういう理解のしかたが、『年季』ってやつなのかもしれませんね。

 

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