お弁当の蓋
毎日妻が作ってくれたお弁当を昼に食べます。遠いむかし、虎ノ門にある病院で働くために新婚で上京した時から(東京は物価が高いのだから昼食ぐらい手弁当で浮かせなさい、と諸先輩がアドバイスしてくれたので)妻は弁当を作ってくれ続けています。
そんなお弁当の蓋を開けて、蓋の裏側にくっついたごはん粒を一つ一つ箸で摘まんで食べるのが、私の最初にするルーティーンです。この作業をしながら,新婚の頃を思い出します。
「そんなことしないでよ、卑しん坊みたいでみっともない!」
弁当の蓋の裏に付いたごはん粒を当然な顔して食べているわたしの姿を初めて見たとき、妻が強い口調でそう云いました。
「なんでだよ。うちはばあちゃんから『お百姓さんが汗水垂らして作り上げたお米だから一粒たりとも疎かにするな』という指導をされているんだよ」
「そんな屁理屈どうでもいいから、少なくとも人前ではそんな貧乏くさいことしないで。あなたは医者なんだから」
「医者だとか、そんなこと関係ないよ。別に悪いことなんか何もしてないんだから!」
・・・中学の時からそうやって食ってきたわたしも、わたしの家の代々の習慣を否定されてカチンときてそう口答え。
そんな口論をよく繰り返しました。こういう習慣は、結局は子どもの頃に受けた躾に起因します。都会育ちの妻は母親からプライドの教育を受けてきたのでしょう。農家出身の我が家では農家としての教育を受けてきました。何が良いとか悪いとか、そういう問題は別にして、子どもの頃の親の躾が一生すり込まれていくのだということを、若いお父さんお母さんはいつも意識しておかねばなりません。そして、自分が常識だと思っていることも自分の家の躾に起因するモノであって決して普遍的な常識ではないことも多々あるのだと云うことを意識しておくことをお勧めします。その子が社会に出たとき、社会常識と違っているとイジメに遭う危険性も秘めているからです(弁当の蓋のごはん粒のことではありません)。
今は、かつての飽食の時代(バブル時代)と違って世の中の常識も様変わりしてしまったせいでしょうか、夫婦ともにお弁当はまず蓋の裏のごはん粒から食べます。結局我が家では、わたしの習慣の方に落ち着きました。
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