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結果説明のモットー(番外)

実際のインタビューを新婚の管理栄養士さんから受けながら、ふと思い出したことがあったので、追加で書いてみます。

説明に影響を与える要素として思いの外大きなものに”年齢”があります。受診者(患者)さんの”年齢”ではなく、説明をする私たちの”年齢”です。”経験”というよりは”年齢”です。

例えば、食後高血糖を起こさないようにするための食べ方のアドバイスとして「よく噛む」というのがあります。健診に関わる保健師さんたちの常套句は『1度に30回以上噛む』ですが、わたしはそんな言葉は使いません。「保健師さんは健診結果に改善効果があるから」と自信もってますけど、「あんたら自分でやってみたことあるんか?」と云いたくなる。30回なんか数えていたら食べているもの自体の味が分らなくなるから、絶対あんたらは続けられないよ!と。あ、ちょっと横道に逸れました。こういう時にわたしは、「飲み込みかけてまだ噛めると思ったら一度戻してでも噛んでください。そのうちに噛まずにはおれなくなって気付けば今まで気付かなかった味に驚くでしょう」とアドバイスするのですが、相手が高齢だと「どうせもう”残された人生は短い”のだから、もっと噛んでおかないと勿体ないぞ、と思って噛んでください」とか平気で云います。こんな失礼な言葉、わたしの歳だからこそ相手も笑ってくれますが、これを今回インタビューしてくれた栄養士のお嬢さんが云ったら、「小娘のくせに失礼なヤツだ!」と反感を買う可能性が高いでしょう。

遠い昔、わたしがまだ循環器内科で毎晩のように緊急カテーテル治療を行っていた頃、忘れられない出来事がありました。真夜中に急性心筋梗塞で救急搬送されてきた男性にすぐにでも再疎通療法を行うべく、一緒についてきた奥さんに病状とできるだけ早くに治療をする必要があることを説明して治療の承諾書にサインをもらおうとしたのですが、奥さんが「朝になってかかりつけ医に相談してから決める」と頑として首を縦に振らず、治療にとりかかれないままゴールデンタイム(再疎通療法の効果が期待できるのは発症から3時間、せめて6時間以内だと云われていました)が過ぎようとしていました。いつも早朝出勤してきた当時の部長が説得に当たり、やっとゴーサインが出たのですが、あとで部長がわたしに云ったのは、「気を落としなすな。君の説明の仕方が悪かったわけじゃない。奥さんの云うには、『あんな若造が、初対面なのに”今治療しないと死ぬ”とか無責任なことを上から目線でまくし立てて脅すから怖くなった』のだそうだよ。インテリジェンスの高い仕事(学校の先生)しているのに、どうして今置かれている状況が分らないのかねえ」と。あの時にはピンとこなかったけれど、今の歳になってみると何となく分ります。今突然わたしの前に若い営業マンが現れて、わたしにどんな意見や提言をしたとしても、わたしは「とりあえず、ノー」と答えるでしょう。

説明を受ける場合にたまたま自分を担当する説明者が”年季”が入っている人かどうかというのは、受ける側の立場に立てばとても大きな要素なんだと思います。もちろん、歳を取っていれば良いというモノでもありません。「このジイさん、偉そうに知ったような口きいているけど、本当は何も分ってないんじゃないの?」と感じさせる人も少なくありませんからね。

 

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