『優しい目』
定期投稿コラムを掲載してもらっている機関誌が発行されたので、ここに掲載します。本当に書きたかったことが完成せずに突貫で題材を変えたので不本意な気持ちで書いたこの記事。まあでき上がってみるとまずまずの内容かな、と無理矢理納得させているところです。
**************************
『優しい目』
我が家の愛犬はビアデッドコリーという犬種で、両目は長い前髪で隠れています。その隙間からちゃんとつぶらな瞳で見ているのですが周りからは目がないように見えるようで、そこがとてもチャーミングでもあります。目立つ犬種なので、公園を散歩していると注目を浴び、特にこどもたちは必ず見つけます。
こどもたちの反応は明らかにふたつに分かれます。「目が見えなくてかわいい!」という声と、「目が見えないから怖い!」という声です。「あの犬、目がな~い!」「毛で隠れているけどちゃんとあるよ。かわいいねー」・・・そんな親子の会話を聞こえないふりして通り抜けるのが常ですが、「ほらワンちゃん。かわいいね~」「イヤだ! 目が見えないから怖い!」と叫ぶ声をすれ違いざまに聞かされるとちょっと驚きます。こどもたちの目線でみると大きくて得体の知れない妖怪に見えるのかもしれません。「目」(視線)から得られる情報はとても大切だということを改めて知らされます。こどもたちは、見知らぬモノと対峙する時や大切なお母さんと話す場合、相手が怒っていないか、楽しそうか、あるいは心を許しても大丈夫な状態かなどを目の中の表情から判断するのだろうと思います。だから、優しく微笑んだ目でのぞき込んであげないと一瞬にして心を閉ざしてしまいます。実は、犬たちもまた人間たちの表情を敏感に感じ取って生きています。様子をうかがいながら寄って来るうちの愛犬は、私が穏やかな目線で笑っていることを確認した途端に尻尾を大きく振り回して身体を捻って喜んでくれます。
目線の大切さは、決してこどもや犬だけの話ではありません。大人は今までの人生経験と想像力と忖度で対処するのでこどもたちのような直感的な反応はしないものです。でも今年は新型コロナの影響で顔の大部分をマスクで覆っている人ばかりなので、相手の顔が目でしか確認できません。だからその大切さをより強く感じます。仕事場のスタッフですら「今の、誰?」と悩んだり、初対面で名刺交換した人の顔が分らなかったりというのは茶飯事です。口元で微笑んでいても相手には表情(心の中)が伝わらないということをしっかり意識して、唯一見えている「目」に表情のすべてを注ぎこまなければなりません。時々ものすごい目力で凝視されて「怒っているのかしら」とたじろぐこともありますが、こんな今だからこそ、お互いに目を通して真意を伝え合えるようにいたしましょう。
| 固定リンク
「心と体」カテゴリの記事
- 男は炭水化物、女は脂肪!(2023.11.30)
- 『かるしお』(2023.11.28)
- アルコール濃度(2023.11.27)
- 高齢ドライバー(2023.11.23)
コメント