スティグマとアドボカシー
Medical Tribuneのweb講演会で、『糖尿病治療Update~最近の知見を含めて~』(虎の門病院の門脇孝先生)と『新型コロナウイルス状況下での糖尿病治療』(関西電力病院の清野裕先生)の講演を視聴しました。
その中で、日本糖尿病協会長をしている清野裕先生の話に出てきた『スティグマ(Stigma)』と『アドボカシー(Advocacy)』の問題はしっかり抑えておかなければならないと痛感しました。どちらも、ここ数年あちこちの学会や記事などでみかけるようになりましたが、現場の医療者ですらこの単語を見たことも聞いたこともない人が大多数なのではないでしょうか。
『スティグマ(Stigma)』:恥・不信用のしるし・不名誉な烙印~ある特定の属性に所属する人に対して否定的な価値を付与すること
『アドボカシー(Advocacy)』:権利擁護~患者の権利を守るために組織、社会、行政、立法に対して主張、代弁、提言を行うこと
単語の定義をこう書いていましたが・・・何のことかわかりますか?ここがさっぱり理解できない定義だから皆さんに広まらないのではないかと思います。糖尿病の場合は、糖尿病だというだけで生命保険に入れない、住宅ローンに加入できない、怠け者のように思われるなどがスティグマです・・・そんなレッテルを貼られて最終的に社会的地位を失われて差別が生じるのだそうです。これに加えて新型コロナの時代の糖尿病患者さんに対して、「重症化しやすいのだから外に出るな」「糖尿病患者が重症化するから医療が逼迫する」「自己管理のできない糖尿病患者にワクチンなんか優先的に接種させるな」とまで云われるようになっていると清野先生は懸念しています。スティグマはそんな社会の心ない人たちの目だけでなく、医療従事者が患者に与えるスティグマもあると云われていました。「糖尿病が悪化しているのになぜ放っていたのか」「ちゃんとやらないと命を落とすよ」などと主治医に云われて、モチベーションを落としてしまっているマジメな患者さんがいるという事実を医療者はちゃんと自覚すべき、と。清野先生が「糖尿病患者さんは糖尿病の治療をするために生きているのではありません。自分のやりたいことをするために糖尿病の治療をしているのですから」と強調していたことに強く同意します。
アドボカシーというのは、患者さんを守ってあげる視点で「患者さんが自己管理に安心して取り組み、健康で自分らしい生活を維持する権利を守るための活動に積極的に貢献する必要がある」という医療者としての意識教育が必要なのでしょう。わたしの感覚では、そんな当たり前のこと(2型糖尿病は体質の病気だということ)を医者や看護師(少なくとも昔の教育を受けた人たちではない)が分ってないことが不思議でしかありませんが。
| 固定リンク
「心と体」カテゴリの記事
- イヌを飼うと元気で長生きになる理由(2024.09.13)
- 柔軟性と寿命(2024.09.06)
コメント