『ハウツー』
定期のコラムが発行されました。今回は三部作にしました。『ハウツー』『進化論』『自然体』・・・のつもりですが、どうなるかしら。
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『ハウツー』・・・ウィズ生活習慣病(1)
「『早足で歩く』これが一番。これだけ言っておけば運動指導は大丈夫だ!」
「食べるのが早すぎるよね。量も多い。時間をかけてゆっくり食べるべきだね!」
以前参加した研修会の事例検討会で、あるドクターが自信ありげにそう語るのを聞きながら、前に同僚が同じことを言っていたのを思い出しました。「運動と食事を注意すれば生活習慣病は改善する」・・・誰でも知っていることを得意げに話していますが、問題はその先・・・分かっていてもできないから、どうする?というところで皆が頭を抱えているのです。「それは保健師さんの仕事だ」と言って逃げる医者では頼りになりません。その点、保健師さんや管理栄養士さんは知識が豊富です。前出の研修会でも様々なアイデアが出されました。「デザートにアイスクリームは欠かせない」という人には「アイスキャンデーやかき氷に換えればカロリーが格段に減る」とか、「出張先でついファストフードの店に行ってしまう」なら「郷土料理の店を探すと楽しい」とか、「運動嫌いな人にはヨガを勧めてみよう」とか、「30回噛ませたら健診結果が良くなった」とか。
そんな話を聞きながら天邪鬼な私はそっと首をかしげます。アイスクリームを食べたい人は別に冷たいお菓子なら何でもいいわけではないし、面倒くさくてファストフードを選ぶ人が独りで郷土料理屋なんか入らないし、運動したくないのにヨガをするとは思えない。毎回数なんか数えていたらちっとも味わえない・・・専門家は意外に自分では実践しません。学会や研究会に行くと会場を行き来するエスカレーターやエレベーターには長蛇の列なのにその横にある階段はスカスカだったりします。他人には「運動しろ」と言いながら自分では楽な方法を探してしまう人たちのアドバイスはどこか他人事で、到底当事者の苦悩は理解できまいとこっそり同業者をディスっている私です(笑) 私は「自分ならどうする?」と考えることにしています。食べたいアイスクリームをガリガリ君に換えるよりデザートの分だけメインを減らす方が堂々と食べられるのではないか、出張先のファストフードはもうひと区画離れた場所の店舗に行って買ったら罪悪感が薄れないか・・・大したことでなくても、自分だけの達成感は得られます。
専門家の知識は普遍的ですが、それが自分に活かせるかどうかは分りません。他人が成功した方法で自分も成功する確率は決して高くありません。「必ず上手くいく方法がないならしない」という人は、きっとずっと何もしないでしょう。行動変容に王道はありません。どうぞ、自分なりに試して自分だけのレシピを見つけてください。私にもそのレシピがありますが、決して他人には教えません。どうせ、自分だけに効く魔法ですから。
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