「ちょっと高め」という云い方
血圧とか血糖とか、むかしからよく「ちょっと高め」という云い方をします。地域の保健師さんが最初に言い始めたのかもしれません。「血圧が150、ちょっと高めだから注意しましょうね」とか「血糖が120、ちょっと高いから食事の注意をしましょう」とか。予防医療の世界に入ってきたときに、「なんじゃ、その云い方は?」とイラッとしたものです。血圧150は”高め”じゃなくて『高血圧症』でしょ。血糖120なんてほとんど『糖尿病』でしょ。どうしてそんな生温い云い方するの?と。「まだクスリを飲むほどじゃなくて、食事や運動で対処すれば改善する可能性もある時期だから」と当時の保健師さんは苦笑いしながら答えていました。当時は、生活療法は”治療”ではないという風潮がありましたからね。でも、明らかに”病気”の定義に当てはまるのだから、「高め」の表現は間違いだと思いますけどね。
彼女たちに云わせると、「病名はつくけどまだ低い方だからあまり強く云わない方がいい」と思うとのこと。イメージ的に、『病気の中で低い方の人』と『まだ病気じゃないけど高い方の人』という境目界隈の人たちを一緒に考えている印象がありますが、この二つは『似て非なるモノ』の典型です。どうしてわざわざその間に大きな線引きをしたのか・・・それはそこには大きな差があるからです。特定健診で、正常の中に『正常高値』の概念を作ったのは、そのレベルを超えたら”治療”の域に入り込んでしまうということを明確に知らしめすためです。ここの部分はとても大事な領域なのだから、現場の医療従事者は決して曖昧に考えていてはいけないと強く思います。
境界領域を、「まだ病気ではないけど今がんばらないと危ない」と考えるか「ほぼ病気だけど軽いから今を維持するのが大事」と考えるか、あるいは「管理が不十分なダメ状態」と考えるか「とても良い治療中の状態」と考えるか、同じようなものでも当事者のモチベーションはまったく違うものです。だからわたしは判定基準にかかわらず、境目界隈の人には常に後者の考え方を薦めることにしているのです。
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