仕事上の身体活動は健康運動にならない
第21回日本抗加齢医学会総会が先週末に開催されました。例によってWeb参加を申し込みましたが、仕事や所用が多くてリアルタイムでの視聴はごく一部しかできませんでしたから7月後半のオンデマンド配信で細かく視聴させていただこうと考えています。
そんな中、シンポジウムのひとつで同志社大学の石井好二郎先生の『オベシティパラドックスとサルコイド肥満』の講演が頭に残りました。今、シニア層で問題になっているのはメタボよりもむしろフレイルやサルコペニアです。筋肉が落ちてやせていくほど死亡率が高くなる傾向にある中で、若い頃にたたき込まれたメタボ対策にいつまでも固執するとかえって危険なことがあります。それをふまえて運動の担う役割について解説していただきましたが、その中にショッキングなデータが提示されました。『余暇と仕事上の身体活動では健康に与える影響が異なる』というものです。余暇で楽しむ運動は運動強度が強いほど心血管イベント発生や全死亡が減るのに対して、仕事で動くときの身体活動はその強度が強いほど心血管イベント発生や死亡が増していくのだそうです。
わたしは運動指導をするときに、「遅くまで身体を使って仕事してきて、帰ってからまた歩いたりする気力が湧かない」と訴える受診者さんに、「仕事の運動も立派に身体活動ですから、それ以上する必要はないです」と話してきました。それは正しいようで正しくなかったということになります。もっとも、どれだけ仕事で動いて帰っても、好きな運動ならその後にいくらでもできます。好きでもない運動を強いられるから気力が湧かないのです。だから、”健康運動”と定義する以上は、”やりたくもないのに健康のためにやむを得ずやる運動”は余暇の運動ではなくむしろ仕事の運動に近いと考えた方がいいのかもしれません。『運動は楽しむもの』・・・その意識は失ってはいけない。特にシニア層の運動の意識は、楽しんでやっている人と好きじゃないけど”健康のために”やむを得ずやっている人とでは、効果に違いが出るだけでなくおそらく健康障害の程度にも影響を与えるに違いない・・・石井先生の講演を聴きながら、そんなことを思った次第です。
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