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ディスプレイ

定期発行の機関誌が本日発行されました。定期掲載のコラムを転載します。

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『ディスプレイ』

今や小学生の3割、中学生の半数以上が近視だそうで、パソコンやタブレットによる授業が誘因だと言われています。昔は、暗いところで本や漫画を読み過ぎると近視になると言われましたが、今はスマホやパソコンなどが自ら光を発しているからそれを暗闇で読んでも悪くならないそうです。むしろ明る過ぎて眼が疲れるので画面の明るさ調整をしています。教育現場のIT化は新型コロナ時代のオンライン授業で拍車がかかり、学校からの指示でわざわざパソコンやルーターを買った家庭も少なくないと聞いています。

でも、子どもたちの近視は、ディスプレイ画面を見ることによる眼精疲労よりも、遠くを見る機会が極端に減った影響が大きいと思います。黒板を見てノートに書き写すだけでも遠近の眼筋調整ができますが、机上の小さな画面を見るだけなら眼筋が退化して当たり前。コロナ禍でなくても外で遊ぶことは奨励されない昨今、引き籠もりの子どもたちの眼の行く末を案じています。慶應大学の研究によると、近視を予防する “バイオレットライト”という光は日光に含まれていますが、窓ガラス越しだと遮断されるそうです。これもまた外で遊べない最近の子どもたちを近視に導く要因です。サバンナの原住民のように遠くからの猛獣の襲撃を早めに察知する必要はなく、車の運転も自動運転になれば遠くを見なくていいし、遠くのきれいな景色はバーチャル画像で堪能すればいい・・・今の若い子たちの眼が徐々に退化しても特に困らなくなるのでしょうか。

ところで、世の中はペーパーレス化、デジタル化を推奨する流れの中にありますが、紙に書かれた文字を読む時とパソコンやスマホのディスプレイの文字を読む時とでは脳の働きが全く違うことをご存じでしょうか。紙に書かれた文字を読む時、脳は自動的に「分析モード」「批判モード」になり、ディスプレイを通しての透過光で文字を読む時は「パターン認識モード」「くつろぎモード」に切り替わるそうです。つまり、多量の情報を理解するには透過光(ディスプレイ)は適していますが、細かい内容分析に向いてないので誤字脱字や内容の細かいミスを見逃してしまう危険性があります。最近、公文書に誤字が多いのはそのせいかもしれません。小説を読むなら電子書籍を薦めますが決算書を確認するなら紙媒体の方が無難だということです。また、講演内容や掲示物を書き写す時には必要なものを自分なりに把握して取捨選択しますが、話すままにキーボードを打ったり、あるいはすぐにスマホで撮影したりする昨今、情報は漏らすことなく得ているのに頭は何も覚えていない、という空洞化現象が起きています。脳の加速度的な退化もこれまた時代の趨勢だと看過しても良いものなのか・・・アナログ時代最後の世代としてはちょっと不安です

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