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『ゼロ次予防』

現在Web配信で開催中の第62回日本人間ドック学会のプログラムをこの連休を利用して拝聴しました。生活習慣病予防に関わるわたしとしてはとても関心の深い内容が多く、リアル学会なら聴きたくても並行しては聴けなかったであろう内容をすべて網羅することができて、”Web学会時代”様様でした。

その中で、特に興味を引いた内容のひとつが『ゼロ次予防』。特別プログラムの『明日への提言~2020年代の健診・予防医療の発展を目指して~』の中で、千葉大学の近藤克則先生が講演された、『明日への提言ーゼロ次予防の可能性と課題』です。

『ゼロ次予防』とは、”原因となる社会経済的、環境的、行動的条件の発生を防ぐための対策を取る”と定義されています。つまり、健康増進の『1次予防』、早期発見早期治療の『2次予防』、再発予防の『3次予防』に対して、”暮らしているだけで健康になる環境作り”が必要だということです。たとえば建物内禁煙とか運動に適した公園の整備とか・・・。先日紹介した『社会的処方』と同様、最近、学会の内容を見るに付け、わたしの目に頻繁に飛び込んでくる内容なのです。

近藤先生が提示した内容をメモしただけでも、
・公園の近くに住む人は1.2倍頻繁に運動する
・緑地が多い地域に暮らす高齢者にはうつが1割少ない
・歩道が多い歩きやすいまちでは認知症リスクが半減する
・売られている食品の塩分を減らすだけで食塩摂取量は減少する
・地域のスポーツ組織参加率が高いほど転倒率が低下する
など。

特に、「地域の社会参加割合が多い地域では個人の参加状況にかかわらず高血圧者が減る」とか、「スポーツの会参加割合が多い地域では高血圧や糖尿病の有病率が少ない」とか、社会環境や地域全体の意識が変わるだけで各個人の健康度も増す、ということが徐々に明白になってきているということになります。

でも、こればかりは、わたしたち予防医療に関わる医療関係者だけでは達成できない内容です。だからこそ、これからの予防医療の中心を担うべき分野だと痛感していますし、これからはこの『ゼロ次予防』に金をかけることが健全な社会を作る必須項目なのだということを行政に関わるお偉いさん達に理解してもらうために、今回紹介されたような『ゼロ次予防』の効果としてのエビデンスを明確にさせていかなければならないだろうと痛感した次第です。

 

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