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『進化論』・・・ウィズ生活習慣病(2)

少々遅くなりましたが、定期コラムの秋号が発行されましたので転載します。わたしの”ウィズ生活習慣病”シリーズ構想は一応(3)までの予定です。

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『進化論』・・・ウィズ生活習慣病(2)

飢餓の歴史の中で、食べられずに倒れていく人たちを横目で見ながら食わずとも血糖を保って生き延びた人たちがいます。塩分が足りずに力尽きていく人たちを押しのけて少しの塩で血圧を保って生き延びた人たちがいます。糖尿病や高血圧はそんなサバイバルの体質が基本です。環境に一番適した体質が生き残り、子孫の遺伝子が変異して生き残れる体質に変わっていく・・・それが『自然淘汰』であり『進化』なのだと医学生の時に教わりました。まさしく現代社会で生活習慣病に悩まされている人たちの体質は、世が世なら一番たくましく生き延びていけた優等生でした。

とおだてられたところで、自分だけ我慢を強いられるなんてやはり割が合わない。20世紀末に当時の厚生省(今の厚生労働省)が名付けた『生活習慣病』という名前は、「乱れた生活態度のせいだから自業自得だ!」ということではなく、体質と環境と生活習慣の三者が相まって起こるのだから「なりやすい体質なら日頃から“紳士淑女たれ”というメッセージです」と機会がある度に説明してきましたが、やっぱりそこには自分だけ損するような理不尽さがあります。そんな進化なんか要らない。なりたくてなったわけでもないのに「お前は病気だ」と追い回され、「生まれてくる時を間違ったのだから諦めろ」と制限を強要されたり薬を飲まされたりするのは不公平だと思っている人は少なくないはずです。世の中にはいくら食べても太れない人もいれば“水を飲んでも太る”体質の人もいます。人類が存続するためには、すべてが一律の体質では危険だからです。今回新型コロナが人間社会を蹴散らしていますが、これに強い体質の人だけが生き残ってもその体質は次に違う脅威が襲ってきた時には不利かもしれません。だから、多様な体質が混在しているのは大切なことではあります。

生物の最優先事項は“生き延びる”ことであり、決して“健康”ではありません。入ってくるエネルギーが足りなければもっと貯められる身体に変化し、余るなら有事の時のために真面目に蓄える。となると、選び抜かれたサバイバル体質と付き合うのは今世の宿命。どこかの学者や専門家の言う理屈など気にせず、好きな物をどうやったら上手く食べられるか工夫しましょう。糖尿病家系の妻と高血圧家系の私では好きな食物が全く違います。二人とも煩悩に勝てず後悔と懺悔を繰り返していて決して模範生ではありませんが、それでも自分なりに自分の体質に付き合っていけていると自負しています。生活習慣病に対する生活療法はどれも特別な行動ではありませんから、自分の体質を恨むくらいなら、すべて受け入れて充実した毎日を送りましょう。

 

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