老犬の後ろ姿
わが家の愛犬が今日、13歳の誕生日を無事に迎えました。先月末に突然激しい眼振に襲われて散歩の途中に急に天を仰いで動けなくなったときにはワンも私たち夫婦もパニックになりましたが、老年にありがちな前庭疾患(人間で云うところの”メニエル症候群”みたいなもの)であることがわかり治療を受けて幸いすぐに回復することができました。この病自体はわが家の歴代のワン達にも襲った病でしたが、それとは別に歴代の愛犬たちが皆、誕生日の1ヶ月前や2ヶ月前に逝ってしまっていたので、このまま動けなくなるのではないかととても心配しました。
発病直後はわたしが体重20キロ超の身体を抱え上げて階段昇降しました。その後、庭に出ておしっこをするために自分の定位置まで歩く後ろ姿が、自分で制御できないような千鳥足で・・・つい数ヶ月前には庭中を走り回っていたのに、と思うと見ていて涙が出てきました。14年間綴ったわたしのブログを読み返すと、今の愛犬の記事が一番多いのですが、それだけ彼女の一生はとても波瀾万丈でした。初代のワンが肝臓腫瘍の破裂で亡くなって直後に生まれたこの子は初代の生まれ変わりだと捉えていました。そんな彼女がわが家に来る日は突然の激しい嵐で地獄のような飛行機貨物室での惨劇を物語るかのように、わが家に来てもしばらくケージから出てこようとしませんでした。ずっと暗闇がキライで暗い車庫がキライで、だから車に乗るのも頑なに拒んでいました。ところが2016年に2度の熊本地震。家の中がぐしゃぐしゃになり、外にいても地面に這いつくばらなければ立っていられなかった余震の中で、彼女は大きな音がするだけで散歩中でも一目散に逃げてまわりました。あの時、県北の知人宅に避難させてもらった日から、一番安全なところが車の中だと悟り、ことあるごとに車に逃げていこうとしました。
彼女は子どもの頃からとても優しい性格で、決して周りのワンや子ども達に吠えたりしませんでした。小さな人間の子が来るとむしろ自分から逃げていくような性格でした。おそらく先代のお嬢様犬が教育してくれたおかげだと思います。そんな性格だから、半年前にわが家に来たパピーの格好のおもちゃにされ、足腰弱っているのに背中から飛び乗られたり遠くから体当たりを食らわせられたりされても軽く吠えるだけでした。「かわいそうに」と思って見ていましたが、2匹の様子をみていると年老いたバアちゃんに孫娘が容赦なく飛びついて甘えるのに似て、老犬が優しく見守ってやっているのかもしれない(チビの方が頼って生きているような)と思うようにもなりました。
遠く、町田の犬舎から来たのは初代犬とこの子(今回のパピーもそうですが)。彼らが老いていくにつれて「この子は、わが家の子になった本当に幸せだったと思えるのだろうか?」と考えるのです。特に彼女は、熊本の地に来るときも来てからも、普通なら絶対に味わわなくても良かったような悲惨な経験ばかりしてしまって、最後は平穏で静かな余生かと思いきやお転婆娘がかき回して夜もおちおち寝られない日々・・・「ごめんね」「でも、しっかり元気になってもう一度走り回れる体力に戻ってな」などと、千鳥足の老犬の後ろ姿を眺めながら独りごとをつぶやいたのでありました。
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