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認知症予防と運動

河盛先生の講演は引き続き<Part2 認知症の予防に、今、我々ができることをする。それは何か?>がありました。文京区の高齢者住民を対象に介護予防を目指した研究をした結果の紹介です。このYouTubeの配信動画は無料でずっと見られるので、興味がある方は是非ご覧ください。示されたものの中から、メモできた分を列記してみます。

・サルコペニア・サルコペニア肥満と認知機能低下の関連:軽度認知機能障害・認知症ともに、単なる肥満者よりもサルコペニアの人の方が有病率が増し、サルコペニア肥満(握力が低下している肥満者)の人はさらにそれ以上に有病率の増加が著しい。

・運動習慣がある人の方が認知機能テストの成績が良い。さらに高齢になればなるほど運動習慣があると認知機能低下が抑制されている可能性がある。

・ロコモ度が高いほど認知機能テストの成績が悪い。年齢に関係なく移動機能の低下(ロコモ)と認知機能の低下は関連する可能性がある。ロコモ度(移動機能低下)が強いほど軽度認知機能障害のリスクが高まる可能性があり、女性よりも男性の方がその傾向が強い。

・下肢筋力の程度と無症候性ラクナ梗塞(症状のない小さな脳梗塞所見)の関連:下肢筋力が弱いほど無症候性ラクナ梗塞の有病率が増加する傾向にある。

・女性において、中高校生時代に運動部活動をしていたかどうかと現在運動をしているかどうかで4群に分けると、昔も今も運動している人の骨粗鬆症の有病率が一番低いが、中高校生時代の運動経験の有無に関わりなく、現在の運動習慣がある方がない人より有病率が低い傾向にある。

・サルコペニアの有病率と糖代謝を比較すると、糖尿病の人だけでなく境界型糖尿病の人でも正常者に比べて明らかにサルコペニアの有病率が高い。サルコペニアはインスリン抵抗性が強い人の方が有意に多く、糖尿病の有病率はインスリン抵抗性にサルコペニアが加わると有意に増加する。メタボ対策としての有酸素運動(インスリン感受性の増加)とフレイル・サルコペニア・ロコモ対策としてのレジスタンス運動(筋力・筋量の増加)の両方をバランス良く行うことが重要である。

講演の最後に、わたしが今一番興味のある内容を話してくれました。今流行りのSGLT2阻害薬(オシッコに糖を放出させることによって血中の糖を下げる治療薬)の作用機序についてです。劇的に血糖値が改善するだけでなく、脂肪肝がなくなり、体重が減り、腎血流の改善により腎機能が改善し、脳血流を上げ、心不全の改善も促す効果が指摘されてきました。血中から糖を出し、それがなくなったら次は肝臓のグリコーゲンを分解しその次は脂肪から糖を新生させることによる効果・・・でも、それがなくなったら次は筋肉のタンパクから糖を新生させるようになるはず。つまりすでに脂肪肝が改善し肥満がなくなっている(あるいは初めからやせている)患者さんに処方を漫然と続けていったら、徐々に筋量が減ってサルコペニアになっていくのではないか。そうならないためにはどうしたらいいか。今後そういうこともきちんと調べる必要があるだろう、と。わたしもそこのところがずっと気になっていましたから、今後の研究成果に期待したいと思いました。

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