わたしは糖尿病ですか?
「そもそも糖尿病なので他の人より脂肪肝とかにはなりやすいと思いますよ」
人間ドックの結果を見ながら説明していると、「え、わたしはもう糖尿病なんですか?」とよく聞き返されます。「まだ予備軍じゃないんですか?」と。これだけ世の中に糖代謝異常(糖尿病や境界型糖尿病)がまん延して世間のコンセンサスも得ているものと思っていましたが、どうしても「糖尿病」と「予備軍(境界型)」に区別を付けたがるのですね。まあ、わたしが糖尿病家系ではないから、そのあたりのこだわりが理解できないのかもしれませんが。
「糖尿病」という診断名を付けるためには10時間以上絶食していても血糖値が126mg/dl以上あるとか、ここ数ヶ月の平均点であるHbA1cが6.5%以上になっているとか、糖負荷試験の2時間値が200mg/dl以上だとかの決められた基準を満たさないといけません。それに満たないけど正常ではない人が境界型なのですが、わざわざ糖尿病の診断基準まで悪化するのを待つこと自体に意味がありますまい。糖尿病は予備軍の時期に動脈硬化が加速度を増して進行するから、この時期に心筋梗塞の発症率が2倍以上増加することがわかっています。そもそも糖尿病の方の初期の治療目標はHbA1cが6.0%を切れるように(正常域になれるように)することなのですから、予備軍のレベルで見つかったのなら、すぐに治療を開始してそのレベルを維持させる、ということがすなわち糖尿病の治療なわけです。糖尿病の治療の主体はあくまでも運動と食事と睡眠なのですから、それをがんばって生活すること自体が糖尿病の治療。それによって予備軍レベルで維持させることが治療の目標。そう考えると、予備軍のレベルは「とっても優秀な糖尿病の治療中」と考えた方が健全です。
「あなたは糖尿病ですよ」と断言してあげたいけれど、それをかかりつけ医に話すと「まだ違うよ」とか「全然大丈夫だよ」とか云われてわたしの信用がガタ落ちになるので、何となくお茶を濁して話しますけど、意識の違いが将来の合併症に繋がるだけに、「なんかもったいないな」と思うこと頻(しき)りな今日この頃です。
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