SCAD
特発性冠動脈解離という病気があります。閉経前の女性の急性心筋梗塞の原因として話題になり、時々医療記事に出てくることがあります。急性心筋梗塞の時に行う通常の冠動脈造影検査では見つけ難い病変で、それが超音波検査などの進化によって見つけられるようになったことで、一気に脚光を浴びるようになりました。
”特発性冠動脈解離の病因は妊娠、結合組織異常、女性ホルモン、動脈炎、冠攣縮、動脈硬化、薬物中毒、過度の運動などが指摘され、50歳未満の女性の急性心筋梗塞は、その24.2%~35%が特発性冠動脈解離であったとする報告があります。”(Care Net 2022.2.22配信号から抜粋)
で、この『特発性冠動脈解離』=spontaneous coronary artery dissectionの略号がSCADらしいのですが、この略号、必ずしもこの病気のことだけを示す略号ではありません。『SCAD』で検索してみると、silent coronary artery disease(無症候性冠動脈疾患)と一緒にsymptomatic coronary artery disease(症候性冠動脈疾患)とまで出てきます。冠動脈疾患とは狭心症や心筋梗塞のことですが、症状があってもなくてもどっちもSCADって、もはやカオス。うちの病院の医療辞書が入っているパソコンの変換候補には『SCAD欠損症』というのがイの一番に出てきます。SCAD欠損症とは、『短鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症』という先天性の代謝疾患で小児の慢性特定疾患に指定されている病気だそうです。
医療の略号はこういうモノが多く、自分たちの分野だけの共通通貨のような意味合いしかないものも少なくありませんが、さすがに『SCAD』は循環器内科の冠動脈の病気だけで3種類もあるとなると、さすがにこれはマズいんじゃないか、こういう略号は世に出してはいけないのではないかと強く思います。ちなみに、英単語の「scad」は「たくさんの」とか「鰺(アジ)」とかであり、さらに「CAD」はコンピュータによる設計支援ツール(Computer Aided Design)としてその分野では極めて有名です。そもそも「SCAD」って何て読むんかしら?
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