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『確率論』・・・ウィズ生活習慣病(3)

今年度も定期の執筆依頼をいただいた機関誌のコラムの4月号が発行されました。『ウイズ生活習慣病』シリーズの3つめです。一応、4つめで完にしようと思っています。徐々にマニアックな内容になってきている感が否めないので、そろそろ潮時かな、と(でも最終回の予定は来年1月号掲載のつもりですが)

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『確率論』・・・ウィズ生活習慣病(3)

「LDL(悪玉)コレステロールの値を薬でしっかり下げても、狭心症や脳卒中の予防効果は得られなかった」という研究結果が一昨年発表されました。LDLコレステロールは細胞やホルモンを作る上でなくてはならないものですが、多すぎると酸化して動脈硬化を引き起こすきっかけになります。だから、心筋梗塞や脳梗塞を起こした人、あるいは高血圧や糖尿病の治療を受けている人のLDLコレステロールの管理はとても重要です。でも単にLDLコレステロール値が高いだけの人に薬は本当に要るのか・・・LDLコレステロールは食生活が乱れると増えますが、乱れてもいないのに高い人や節制しても値が変化しない人に薬を処方すべきか?という議論は専門家の間でもいまだに結論が出ていません。

人類を存続させるためには多種多様な体質の存在が必要ですから、動脈硬化を起こすはずの高LDLコレステロール血症の人の中に何も起こさない人が一定数いてもおかしくありません。女性は閉経以降に急にLDLコレステロールの値が上がりますが、これだけ平均寿命が伸びて久しいのにその傾向が変わらないのは、高LDLコレステロール血症であることが生きていく上で不利ではない(むしろ有利な)人が少なからず居るからでしょう。くだんの研究で「治療に明確な有効性が見いだせなかった」のは、薬でLDLコレステロール値を下げるべき人たちと無理に下げる必要のない人たちとが混在して、統計処理する時に効果を打ち消しあった可能性がないとは言えません。

私たちは統計学という大きな荒波に翻弄されています。多様な体質がある中で、単純にひとつの検査値を基準にして「上げるべきか下げるべきか」の結論を出そうとします。特に予防医学は、した方がいいのか無意味なのかは統計学に頼るしかなく、集団で検討したら「有効だった」「有効でなかった」の形で発表されます。一番怖いのは、その結果だけを見て今まで処方されていた薬を勝手に止めたり、必死に取り組んでいたことを突然止めたりする人が出てくることです。本来なら自分はどっちのタイプかを見極めて各々に合った対処法を選ぶのが一番ですが残念ながらまだその術がなく、自分の身体を実験台にして一生かけて白黒つけるしかありません。学問はあくまでも経験則です。医学のメカニズムはこれまでの歴史の中でできた理論。社会環境も生活のスタイルも変わっていく中で、今までの理論が通用するかどうかはまだ経験がないのでわからない、というのが本音です。となると、とりあえず確率の高い対処法が無難だということになるのはやむを得ないのかもしれません。

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