独りでがんばっても大丈夫なの?
”順天堂大学大学院スポートロジーセンターの染谷由希氏(現スポーツ健康科学部)、代謝内分泌内科学准教授/スポートロジーセンター運営委員長の田村好史氏らの研究グループは、握力低下と肥満が共存する"サルコペニア肥満"の高齢者は、握力、BMIがいずれも正常値の高齢者に比べ、軽度認知障害(MCI)および認知症のリスクが有意に高いことを突き止めたと発表。詳細を、Clinical Nutrition(2022年3月16日オンライン版)に掲載した。”(Medical Tribune2022年04月28日配信)
この結果は十分理解できます。”認知機能が低下する危険因子として、加齢に伴う骨格筋量と筋力の減少を示すサルコペニア、肥満が知られている。サルコペニアと肥満が合併したサルコペニア肥満は、欧州ではサルコペニア単独よりも日常生活活動の低下を引き起こす要因となることが報告されている”というわけですから。筋肉が落ちる(サルコペニア)→動かない→食べない(あるは食べるけど動かない)→筋肉が落ちるのサイクルで引き籠もりになってうつや認知症のリスクが高くなるというのは、容易に想像できます。それに対して、『都市部在住高齢者におけるサルコペニア肥満例ではMCIや認知症のリスクが高まる可能性が明らかになった。MCIの高齢者では、運動や食事などの生活習慣を改善することで、認知症の進行予防効果が期待される』と考察されているのもわかる。だからもっと運動をするように介入しましょう、というのがわたしたちの仕事。
そこは理解できるとして、サルコペニアやサルコペニア肥満の改善のために、ある日一念発起した人が、毎日毎晩黙々とウォーキングを始めスクワットを始めオートミールを主食とし始めたとしたら、コミュニティの中で皆と一緒にがんばっている人と同等に認知症リスクが改善すると考えて良いのでしょうか。大自然の中で独りで原始人生活している人が呆けていないのはテレビでよく見るからわかる(もっとも、呆けた人は勝手に自然淘汰されているだけの可能性もあるか)けれど、大都会の中で誰とも話さずに独りで生きている老若男女はたくさん居ます。わたしもそうですが、社会のコミュティに改めて参加するのは面倒くさいからやるべきことがあるなら自分自身を律して自分だけでやりたい、と思う人は少なくないはず。それはそれでも問題ないのでしょうか。「そんなの楽しくないでしょ」と思うかもしれないけれど、最近は”独り”なんとかが流行です。独りでがんばる方が楽しいと思う人はこれから多くなると思います。SNSや仮想空間で繋がることとはちょっと違いますし・・・そういう観点からの研究をぜひお願いしたいと思うところです。
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