『あいさつをしよう』
3ヶ月毎に定期発行の機関誌が発行されましたのでコラムを転記します。
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『あいさつをしよう』
わたしが今の病院に最初に赴任したのは今から35年以上も前の研修医の頃でした。赴任して最初に教わったのは「職員とすれ違うときは必ずあいさつをしなさい」ということでした。まだ小さな病院でしたから、職員はみな顔見知り。だから医療スタッフだけでなく、事務職員も売店のおばちゃんも掃除のおじさんもみんなファミリー!という風潮でした。今でも地方の病院に行けばそんな感じでしょう。そんなところに大学病院などからやってくる若い医者たちは、自分の顔見知りの医者やナースにしかあいさつする習慣がないものだから、みんなぶっきらぼうで、こっちから声をかけると戸惑いを隠せないうろたえ方をするか不機嫌そうに無視するかのどちらかのパターンでした(今もそうかも)。わたしもそんな環境から赴任してきた若造でしたから、だれかれかまわず声をかけることに慣れず(というか、まずは知らない職員から声をかけられることにたじろぎました)、引っ込み思案な性格を本当に恨めしく思ったものです。
あれから35年以上、歳もとりましたし経験値も増えましたから、今では誰にでもあいさつできます。相手がわたしのことを知っていようがいまいが、おそらくこの病院で一番の古参のはずだから、声をかけて失礼に当たる相手はいますまい。廊下ですれ違う患者さんやその家族にも普通に「こんにちは」とあいさつするようになりました。性格は相変わらず引っ込み思案ですが、このあいさつ習慣のおかげで、社会人としては助かっています。最近では、公園でワンの散歩中にすれ違うワンちゃん(というかその飼い主さん)にもだれかれかまわず「こんにちは」とあいさつしています。
あいさつって、とても面白いと思います。今まで全く関係のなかった赤の他人が突然知り合いになります。特にどこの誰かも知らないままなのにどこか心がつながった気になります。何の脈絡もなく顔を合わせたらお互いに笑顔になります。しかもそれが、特別な技術やコツを必要とせず、何も気にせずに全員に声をかければいいだけなので簡単です。無視されたところでただそれだけのことで、少なくとも、声をかけて逆上してくる輩はそうはいません。何でもかんでも声をかけていくうちに、いつの間にか自信と勇気が身につく代物です。すばらしいことではありませんか。気が向かなくても、あいさつしておけば相手の気分を損ねることはまずありませんし、自分もどこか良い気分になれるものです。
わたしは「とりあえず、あいさつをしよう!」を積極的に推奨しています。
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