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不定愁訴

甲状腺ホルモンを飲むとその数時間後にものすごく身体がだるくなるようになった。動悸を感じることが増えた。前より気温の寒暖差に敏感になって、ちょっとした変化に身体が対応できなくなった。

甲状腺の全摘手術を受けて甲状腺ホルモンの服用が必須になった妻が、術後数ヶ月してから訴えるようになった”不定愁訴”です。なぜ”不定愁訴”と呼ぶかというと、それを外来受診時に主治医に話しても鼻で笑われてしまったからです。「甲状腺ホルモンの値が完全に正常範囲内にあるのだから、甲状腺ホルモンのせいでそんな症状を起こすことはない。更年期障害かなんかじゃないの?」と。「だって、明らかに術後から起きているし、内服したら起きるのだから関係がないはずがないのに」・・・不満げな彼女はネット検索をしてみました。そうしたら、世のSNSの中には、ほぼ同じような境遇で同じような症状を訴える書き込みが大量に見つかりました。「ほら、やっぱり、そうでしょ!そうだと思ったのよ!」・・・嬉々として彼女は声を弾ませました。

人間ドックの結果説明をしているときに、「浮腫む」とか「眠れない」とか「なんか変」とか、そんな不定愁訴の相談を受けることは少なくありません。当人としては、「どうせ主治医の云ってもバカにされるから云わない」とのこと。主治医は自分の経験値として感覚的に理解できないものは相手にしない傾向があります。「更年期障害みたいなもんじゃないの?」と。でも更年期障害は女性ホルモンの不安定さ(今まであって当たり前だってのものがなくなってきた影響)がなせる技なのだから、たとえ外からホルモン剤で補充して検査値を正常に保ったとしても生来あるホルモンと余所者ホルモンでは体内反応が違っててもおかしくはないと思います。そんな人に妻のエピソードを話すと「そうでしょ。やっぱりそうでしょ」「よかった」とものすごく安堵の表情に変わったのが印象的でした。そういうパターンがこれまでの3人か4人か経験して、身体の反応は理屈では解決できないことがたくさんあるのだということを悟りました。「それは関係ない」と云い切るのはその筋の専門家に多いのだけれど、自分の知らない現象が理屈で説明できない現象として、それでも何らかの因果関係がその病気の治療や処置によって起きることがあるのだということを念頭に置いて患者さんの訴えを聴いておくことが大切だと思います。

一方で、食物アレルギーの症状がひどくなった妻が紹介されて受診した呼吸器の専門医は、ものすごく聴く耳を持ています。聴く耳を持っているというより経験値をしっかり自分の中で整理できている感じ。今までどこの医療機関を受診しても「よくわからない」と拒まれていた症状のひとつひとつに「そういう人が確かに居ますよね」「それはわたしの知っている患者さんの症状の中では一番強いかも知れないけれど、理解はできますね」と云って自分なりのメカニズムを解説してくれたそうです。

自分の”不定愁訴”を相手が理解してくれたとしてもその治療方法があるわけではありません。でも、それを理解してもらえるという安堵感は計り知れないものがあるのだろう、と妻のエピソードを聞きながら痛感した次第です。

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