『いやいやする健康運動って?』
定期発行機関誌が発行されたはずなので、今回もコラムを転載します。
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『いやいやする健康運動って?』
今、シニア層で問題になっているのはメタボよりもむしろフレイルやサルコペニアです。筋肉が落ちてやせていくほど健康度が落ちて死亡率が高くなる傾向があると言われています。だから、若い頃にたたき込まれた“メタボ対策”にいつまでも固執し過ぎるとかえって危険なこともあるのです。昨年webで参加させていただいた学会の内容の中で一際印象に残っているのが、『同じ身体活動量でも、余暇と仕事上のそれとでは健康に与える影響がまったく違う』というものでした。余暇で楽しむ運動は強度が増すほど心臓病の発生や全死亡が減るのに対して、仕事の時の身体活動は強度が強くなるほど心臓病の発生や死亡が増していくというのです。つまり、いやいやする運動と好きでする運動とでは同程度の運動量でもまったく逆の効果をもたらすということになります。私は運動指導をする時に、「一日中仕事で身体を使って疲れるので、さらに帰ってから歩いたりする気力が湧かない」と訴える受診者さんに、「仕事の運動も立派に身体活動ですから、それ以上する必要はないです」と話してきました。それは正しいようで正しくなかったかもしれません。もっとも、どれだけ仕事で疲れて帰っても、好きな運動ならその後にいくらでもやります。好きでもない運動を強いられるから気力が湧かないわけで、”健康運動”と言っても、”やりたくもないのに健康のためにやむを得ずやる運動”はむしろ仕事の時の身体活動に近いと考えた方がいいのかもしれません。『運動は楽しんでやるもの』・・・その意識は失ってはいけない、そう痛感しました。
一方で『社会的処方』ということばも最近の学会で知りました。ある地域の高齢者の研究では、運動サークルに毎回参加しているけれどまともに運動せずに近所の方とおしゃべりばかりしている人と独りでマジメに運動に取り組んでいる人とを比較したら、4年後に要介護になる率はおしゃべりおばさんの方が低かったというのです。将来の寝たきりを予防するためには、単に運動するかしないかということよりも、周りとつながりを持っていられるかどうかの方が大切だということになります。仲間と楽しくわいわい騒ぐより独りで黙々とがんばりたいタイプの私にとって、これはとてもショッキングな研究結果でした。私のような性格の高齢男性は決して少なくないと思いますが、たとえいやいやでも、社会のコミュニティの中に自ら入っていく勇気を持たなければなりますまい。
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