思索の時間
年に一度の職員健診の日、検査ごとに待ち時間が生じるので多くの人が手にスマホや本を持って臨んでいる中、わたしはいつも何も持ちません。もちろん、持っていることを忘れてどこかで失くすのが怖いというのもありますし、手に何か持ってあちこち移動するのが面倒くさいというのもありますが、主たる理由は贅沢な思索の時間を作りたいから。今の時代、いつも手にスマホやタブレットを持ち、時間さえ余れば目的もなくスマホをいじるのが日常。ヘタをすると仕事をしていてもときどき合間に画面確認をしたりしてしまう昨今。だから、健診の日くらいノースマホデーにしてみようか、と。
以前は待合室に暇つぶし用の雑誌なども置かれていましたが、コロナ禍のためにすべて撤去されました。今年は思いの外流れがスムーズで待ち時間があまりありませんでしたが、さすがに大腸検査のための前処置は時間がたっぷりありました。うちの施設の内視鏡室の前処置室には大きな窓があり、窓の外では近くの小学校の校庭で小さな生徒たちが持久走大会のようなことをやっていました。その長閑な風景をぼーっと眺めながら「最近こんな贅沢な時間なんてなかったなー」としみじみ。ちょっとまどろみの空気になったころ、担当の看護師さんがやってきました。「検査開始は今から約1時間半後です」と。「あと1時間半もあるのか」…分かってはいたけれど意外に長い待ち時間ができた!という誘惑にとうとう負けてしまいました。そっとロッカールームに戻ってロッカーからスマホを握って元の場所へ。
『何もしない生活』って、急にしようとなかなか思ってもできないものですね。
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