社会復帰のための足掻きの時期
わたしが産業医をしている会社の若い従業員がメンタル不調のために突然休職してから数ヶ月が経ち、そろそろ復職についての面談をということになりました。
体調はまずまず、食欲などはないわけでもないがまだ気分には若干ムラがあり、夜なかなか眠れないから昼にならないと起きれないことが多い。でも体調は悪くなく長時間運転なども普通にできる。仕事はできないわけではないと思う。若干不安はあるが、いつまでも会社に迷惑はかけられないから来月辺りに復職して試してみたい。それでダメそうだったら退職して次のことを考えてもいいのかな、と。
彼の考えはそんな感じのようです。でも、多分そんな了見では復職は難しいでしょう。まず何よりも会社も医者も復職自体を許してくれないでしょう。数ヶ月休職した人が復職するためにはまず生活リズムを戻すことからしなければなりません。毎朝決まった時刻に起きて会社に行き業務時間が終わったら帰宅して決まった時刻に床につく、そんな当たり前の毎日のことが確実にできることが前提条件ですから、そんなリハビリから始めなければなりません。その気になればそんなことは容易なことと皆が思いがちですが、このハードルがなかなか越えられないものです。
昨今は誰もが病気になれば必ずネットで検索します。メンタル不調については、おそらく「まず何も考えずに何もしないことが大切。そうするうちに時がきたら自ずと体調が回復して勝手にやる気が湧いてくる。その時まで焦らずに時を待ってください」みたいなことが書かれているでしょう。それはもちろん正解なのですが、ぼぉっと1日を過ごしていくうちに朝も勝手に目覚め、仕事に行けば最初は戸惑うけどすぐに溌剌と働けるようになる、という誤解をしている人も少なくない気がします。気分が戻ってきてから元の職場に戻るまでのリハビリは、自らの意思と決意を固めた上で自分なりに足掻(あが)く期間が必須なのです。長期休暇明けの復帰という感じにはいきません(普通の休み明けでもリズムがなかなか戻らないものなのに)。さて、彼はこれからどうなりますか。とりあえず、上司や主治医と相談するようにアドバイスしましたが。
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