« 2023年2月 | トップページ | 2023年4月 »

2023年3月

睡眠不足とワクチン効果

夜間の不十分な睡眠はワクチンの効果を低下させる?

夜間の不十分な睡眠は、ワクチン接種後の抗体反応を低下させる可能性のあることが、「Current Biology」に3月13日掲載されたメタアナリシスで明らかにされた。ワクチン接種前後の睡眠時間が6時間未満の人では、7時間以上の人に比べてワクチン接種後に産生される抗体の量が少なく、その損失は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種後2カ月間の抗体減少に相当するものであったという。研究論文の上席著者で米シカゴ大学名誉教授のEve Van Cauter氏は、「十分な睡眠はワクチンの効果を増強するだけでなく、持続期間も延ばすと考えられる」と述べている。”(Medical Tribune2023年03月27日配信)

生物の機能を良好に保つキーワードは腸内細菌と睡眠。いずれも諸悪の根源になる炎症反応や免疫反応を制御するためには必須の要素であることが云われ始めて久しいわけで、腸内細菌と睡眠を制する者は病気を制すると云っても過言ではありますまい。もっとも、この論文、「日ごろは超ショートスリーパーであってもワクチン接種を受ける前後だけでもよく寝てください」という結論ではないと思うので、結局は日常の生活習慣の大切さを証明したことになるのでしょうか。それと、そもそも睡眠時間が短くなりがちな高齢者(わたしも含めて)は、どうしたらいいのでしょうか。ワクチン接種前後では睡眠導入剤を服用してでも寝た方がいいぞ!と総括してもいいのでしょうか。

結局、「COVID-19ワクチン接種により得られる防御効果は、既存の疾患のある人、男性、肥満の人では低下しやすい。これらはいずれも個人では変えられない因子だが、睡眠時間は自分で改善することができる」ということを云いたいようです。
 

| | コメント (0)

「食後の高血糖・高脂血症とスローカロリーライフ」

わたしがこっそり登録している一般社団法人スローカロリー研究会のメルマガから第9回年次講演会(Web講演会)公開開始の連絡がきました。今回のテーマは「食後の高血糖・高脂血症とスローカロリーライフ」だそうです。研究会のホームページの右上のバナーをクリックするとYouTubeの動画が聴取できるようなので、興味のある方はぜひご覧ください。

”食後の高血糖は家森 幸男先生の「和食とスローカロリー」。30年にわたるWHOとの共同研究の結果、和食はスローカロリー食であり、日本人の長寿の秘訣であることをエビデンスを交えてご講演いただきました。食後の高脂血症は、田中 明先生(女子栄養大学 名誉教授)による「動脈硬化リスクとしての食後高トリグリセリド/TG血症を考える」です。そして森 真理先生(東海大学 健康マネジメント科)からは、当研究会が支援した「血糖値に優しい補食のレシピ開発」の実践報告が発表されました”

とのことです。

 

 

| | コメント (0)

運動と腸内細菌

スローカロリー研究会から発信されてたニュース記事です。

運動が腸内細菌を健康に がんリスクも低下 肥満・メタボの人は運動を

ウォーキングなどの運動をすると、腸内細菌叢が健康になり、がんのリスクが減少するという研究が発表された。運動により心肺機能を改善すると、腸内細菌叢に好ましい変化があらわれ、健康をサポートするのに役立つことも分かった。肥満やメタボの人は、がんを発症するリスクが高いことが分かっている。腸内細菌を改善しがんを予防するためにも、運動を習慣として行うことが勧められる。”(2023年01月26日発信)

先日、大腸ポリープ切除術を受けたときにその切除対象になるポリープ以外の大腸粘膜がほぼきれいで、もう10年以上存在していた4mmφレベルのいくつもあったポリープが消失していたことに驚きました。それがあったからこそ定期的に大腸検査を受けてきていたのです。きれいな大腸粘膜画像をモニターで眺めながら、「ポリープって消えることもあるんだ!」と感動し、「これはきっと腸内細菌叢が変化したからに違いない」とずっと続けて飲んでいるR-1のおかげだと推測したのですが、もしかしたら毎日地道に続けているウォーキングの成果である可能性もありそうです。

はい、どちらも続けましょう。
 

 

| | コメント (0)

異体字

サッカーW杯で「三笘の1ミリ」として有名になった三笘薫選手の『笘』はたけかんむりですが、苫小牧の『苫』はくさかんむり。

この”たけかんむり”と”くさかんむり”の違いだけの漢字はまあまああります。『管』と『管』とか、『簔』と『蓑』とか。こういうのには『異体字』という概念もありますが、『苫』と『笘』の場合は異体字ではないそうです。”「漢辞海」によると、「笘」は「竹を折って作った簡単なむち」、「苫」は「家屋を覆うために編んだ、カヤ”ということでこの2つには違った意味があるからです。

で、その『異体字』って何? 検索すると、「異体字 とは、読みや意味、用法などに違いはないが、字体の異なる文字の組。. また、そのうち、正字体とされる字(正字)とは異なる字体を持つ字のこと。. 正字ではない方の文字のことは俗字とも言う」とありまして、まあ正直なところいっぱいあります。『わたなべ』が『渡辺』だけでなく『渡邉』『渡邊』などなどたくさんある。あるいは『さいとう』が『斉藤』だけでなく『斎藤』『齋藤』『齊藤』『齋籐』などと・・・これは、むかし、名前を申し出て戸籍を登録する時点で、書いた字がいい加減だったりあまりにも汚い字でそれを役場の担当が転載するときに書き間違えたりした歴史の繰り返しで何種類もできたからなのだろうと自分では理解しています。わたしの名前の名字には『高』という字が入ってますが、これも戸籍は『はしごだか(髙)』。これを資格申請するときや銀行振り込みの手続きのときやどっちを書くべきなのか妙に迷ったりします。もう異体字であればどの字を書いてもOKとうことにしてもらいたいものです。そもそも登録するときにいい加減だったから(あるいは省略したから)こうなったのでしょうから。

話が脱線しましたが、漢字の中で、”くさかんむり”と”たけかんむり”の部首だけ違う文字はたくさんあります。『管』と『菅』も意味が違うから異体字ではないのでしょう・・・”たけ”は『くだ』、”くさ”は『茎が丸く筒状の植物 』・・・調べるとなかなか面白い歴史が湧き出てきて興味深い。『簔・蓑』はどうも異体字のようです。

 

| | コメント (0)

息切れ


世間のマスク着用が"個人の判断"に委ねられるようになって2週間ですが、仕事柄、職場では今までと何ら変わらないルールが適用されています。もう慣れっこになっているのでそれはそれで別にいい(かえってしていないと不安になる)のですが、最近、階段を上るのが妙に息苦しく感じます。3年前のマスク付け始めの頃はもちろん階段昇降はかなり息苦しくて、「こんなことしてたら血圧が上がって危険じゃないの?」とか思ったものですが、慣れてきたのかはたまた心肺機能が鍛えられたのか、すぐに順応できて、マスク生活に何の不自由も感じなくなっていました。

それが、最近になってまた息苦しくなるようになってきたのです。職場(診察室)が4階にあるので毎日何度も一階の医局から階段を上ります。この習慣は少なくとも2011年の東日本大震災の電力不足騒動のとき以降はずっと続いています。息切れが酷かった3年前には2階まで上がった後2階フロアを横切って反対側の階段を二階上がったりして工夫したものですが、その後はずっと一気に駆け上がることが苦ではありませんでした。でも最近はマスクを外さないと4階までは一気に上がれなくなりました。そうです。マスクを外せばどうということはありません。スタッフとすれ違う時だけ慌ててマスクをして、通り過ぎたらマスクを外すなら息切れはありませんのです。秋から冬の間コントロールが今ひとつだった血圧は不思議なことにほぼ息切れ症状の出始めと時を同じくして良好な値に低下しました。だから、息切れは血圧のせいではないだろうと思います。

そうなると、この急な息切れの原因は何か? 確かに息切れする前に足の筋肉が異常に疲れるようになったから体力が急に衰え始めたせいなのかもしれませんが、でももしかしたら日ごろ家の中やワンズの散歩の時にはマスクを外すようになったのが原因ではないか?とも疑っています。マスクで口鼻を覆っている期間が一気に減ってしまったために、口鼻を覆われて活動するのに再び順応できなくなってきた、とか。どちらにせよ、もう少し気温が高くなってきたら極力マスクは外さないと苦しくなるのは目に見えています。無理しない程度に適宜対処していきましょう。

| | コメント (0)

超加工食品

<日本人は「超加工食品」を食べ過ぎている>

 ”東京大学は、日本人成人2,742人を対象とした食事記録のデータをもとに、菓子パンや清涼飲料などの超加工食品の摂取量と年齢・体格・喫煙状況などの個人的特性との関連を調査した。その結果、1日の総エネルギー摂取量のうち、超加工食品から平均して3~4割程度を摂取していることが示された。さらに、年齢が若い人や、現在喫煙している人ほど、総エネルギー摂取量に占める超加工食品の割合が大きいことが分かった。超加工食品を多く食べると、食事全体の質が低下する可能性があり、肥満や心血管疾患などとの関連も報告されている。「超加工食品の摂取量に関わる個人的特性を解明することは、効果的な栄養政策の方針を定めるためにとても重要」と、研究者は述べている。”(保健指導リソースガイド2023年03月20日号)

『超加工食品』というのは、”複数の食材を工業的に配合して製造された、加工の程度が非常に高い食品であり、ソーセージ・菓子パン・ポテトチップスなどのスナック・清涼飲料などが代表的”だそうです。まあ、内容は原文を読んでみてください。

書かれていることは誰でも理解できることです。「で、どうするの?」というところまでいかないとこの公衆衛生的な研究はただそれだけのことになります。「こんなのばかり食ってると生活習慣病になるぞ」なんてことは20年前にわたしが予防医学に世界に入ったときにはすでに常識でした。これだけ健康意識が高まって『食事の欧米化からの脱却』の施策がいろいろ提唱されているにもかかわらず、いまだにこんなことを云っているのだから、おそらくこれは今後も画期的な改善は得られますまい。なぜなら、これらは全て工業製品であり、企業が業績を上げるために「いかに売れる物を作るか」という産業革命時代から続く資本主義社会の企業理念が基本だからです。かなり”健康的な”作り方に換わっているんだ!と主張したところで五十歩百歩なわけですから、この状態を打破するのは、国民一人一人に手作り料理を作る努力の意識を持たせることではなく、『超加工食品』を企業に作らせないか、あるいはタバコや酒並みの高い税金をかけて高価な商品にさせるかしかないと思っています。わたしたちの世代は好んで食べないようなお菓子は今の若者たちにとっては基本中の基本の食材ですし、おそらくその親世代も好きなのでしょう。

一応、ご紹介はしておきますが、この研究結果が公表されることで、食べるのを止める若者が出てくるとは到底思えません。

| | コメント (0)

「信じる」

ワールドベイスボールクラシック(WBC)の優勝おめでとうございます。まだ当分の間、その余韻は冷めないことでしょう。テレビでもSNSで多くの逸話が紹介され、多くの秘蔵動画が公開され、わたしなんかそれを見るたびに感動で涙している日々です。経済効果が、昨年のサッカーW杯の5倍だと聞いて、確かに全試合を地上波で流すはずだと理解しました(もちろん、地上波で放映したから国民みんなが歓喜したという面もありましょうが)。なにしろ始まる前は大谷とダルビッシュくらいしか知らなかったであろう老若男女(うちの妻もその一人。わたしも似たようなもの)が決勝戦の頃には全スタメン選手の名前を語り、各々の選手についての蘊蓄を各々に語るようになったわけですから。

そんな感動の日本代表を率いた栗山監督が「自分は選手を信じているから」ということばを何度も使いました。「全てが超一流選手だからつべこべ云う必要はない。信じていることをわかってくれている」と。素晴らしいことだと思いますが、これだけ他人を信じることができるということは、自分を信じ、そんな自分に自信があるということだと思います。自分に自信がない人ほど他人を信じられないもの。物静かな彼の謙虚な佇まいの中には、自分そのものを信じているという強い自信に満ちあふれた表情がいつも見えていました。

『自分を信じている、という自信』・・・ことばで云うのは簡単ですが、そう簡単には生まれません。わたしなんか一生実感できない悟りの域のことばだという気がします。

| | コメント (0)

3年間を返せ!

「この3年間を返せ!って云いたい心境ですよ!」

先日70歳代の人間ドック受診者の男性が、そう云いました。これはコロナ禍のことを指しているのだということがすぐにわかりました。本当にこの3年間は過ぎ去るのが速かった。あの殺人ウイルスが凄い勢いで襲ってきて著名人やら身近な人やらがどんどん命を落としていった、あの光景ははるか昔の出来事のように感じていますが、その後の3年間、季節の変化も感じることなく、すべての行事がことごとく消えてなくなり、毎日が同じような日々の繰り返しで、何があったのかあまり思い出せないままに、気づけば3年以上が過ぎ去ってしまいました。その間にオリンピックもサッカーW杯もあったのに何となく全てが夢の中。

3年前に入学して今年卒業する学生たちには本当に何だったのかわからない3年間だったことでしょう。青春時代の大事な3年間が全て奪われた心境でしょう。でも、彼らにはこれからの未来があります。この3年間も貴重な体験として将来の語り種になるだけのことでしょう。同窓会で集まるたびに特殊な経験だったからこそ話題に事欠かないに違いありません。でも、年寄りは違います。わたしもそうですが、完全に3年間が人生から削除されてしまいました。単なる削除なら良いけれど、ちゃんと三歳分だけ確実に歳をとり、明らかに老いてしまいました。この3年間で返って若返った!という人が居るなら会ってみたいものだ! だから、くだんの男性の言葉を聞きながら「その通りだ!」と心の中で相槌を打ちました。年老いてからの3年は若い頃の3年など比較にならないほど取り返しの付かないような貴重な時間なのですから、失った時間の大きさにため息が出ます。「今から取り戻さなけりゃ」と彼は云ってましたが、わたしにはもうそんな気力は生まれてきません。最近の3年が完全に消えてしまったがために、『10年』が異常に短く感じています。東日本大震災からもう12年だそうですし、熊本地震からもうすぐ7年です。妻の手術から5年。何もかもがついこないだだった気分になってしまうのは、やはり3年間が抜き取られてしまったからなのでしょうか。

まあ、この歳になってグチっても何も得ることはありませんから、そろそろ冬眠から起き出してみましょうか。もうすぐ新年度ですし。

 

| | コメント (0)

ハクモクレンの顛末

わたしがワンズの散歩をする公園にはその入り口に大きなハクモクレンの木があります。

今月初めにポツポツと白い花が咲き始めたら、その3日後にはほぼ満開になりました。遠くから見ても壮観で、眺めているだけでも人生観が変りそうな、そんなステキな花です。だから、木の下ではスマホを構えて写真を撮る老若男女がたくさん集まってきて華やかな空間になっていました(もちろんわたしもその一人。毎日SNSに写真を上げていました)。でも、何日もしないうちにハラハラと落ち始め、足元には皆に踏みつけられて茶色に変形してしまった無惨な花の残党。まだ残っている白い花には目を向けて「だいぶ散ってきたな」などと感慨深げに眺める人はいても、「踏み躙られてかわいそうにな」と嘆きながら地面を眺める人はおりません。せいぜい、眉間に皺を寄せながら「滑らないように気をつけなきゃ」と睨んで足早に通り抜けていく人が居るくらい。その手のひらを返すような態度の豹変に何だかわからない苛立ちを覚えてしまった今年の春。きっと、その朽ち果てた花の姿に、老いゆく自分を重ねてしまったのかもしれません。

でも、ハクモクレンの花にとってはそれが当たり前で、変な憐憫の感情なんて求めてもいないことでしょう。もう今は花は全て散り、若葉が萌え始めてきています。夏にはセミが幹に抜け殻を残して旅立っていきます。決して木陰を作れるような大きな存在ではありませんが、公園駐車場の入り口に昔から変わらぬ姿で標識のように佇みながら、公園を出入りする老若男女を眺めています。落葉樹と常緑樹の各々に役割があるようにこの数日間だけの白い大きな花の儚い生にも何か意味があるのでしょう。だから、落ちてしまった花の行末に自分を重ね合わせて嘆くよりも、皆に癒しを与えて輝いている数日間をしっかりと愛でて喜んでおくのが得策だなと思う事にいたしました。

| | コメント (0)

座右の銘

先日、運転中のラジオで『座右の銘』の話題がありました。「あなたの座右の銘を教えてください」と聞かれたら何と答えますか?というやつ。

「ボクの座右の銘は『人間は煩悩の生きものである』なんだけどなぁ。ちゃんと準備してあるのに、いまだに誰もそんな質問してくれないんだよなぁ」・・・独りで勝手に独り言。

今の予防医療の世界に入ってすぐにこんな考え方になって以降、今でも変わらないのでこれはホンモノだと思ってはいるのです。だれか、わたしにこの質問してくださいよ。

この『座右の銘』の話、ここに初めて書くのではない気がしたから検索してみたら3件ヒットしました。ほらね。でもその中で、2015.10のブログでは『人間は煩悩の生きものである』をやめて『余裕綽綽』にする、と書いてますね。全然忘れていました(笑)なんか、歳を取るにつれて、『余裕綽綽』な生き方が憧れなようで憧れにならない、そんな心境になっていますが、もう少し歳を重ねると、再びこれが目標になれるようになるのでしょうか。

 

| | コメント (0)

意識のギャップ

「QOL」という言葉にある医師と患者のギャップ

 CareNet(2023/03/12配信)に載っていたこの記事に同意。『QOL(Quality of life)=生活の質、生命の質、人生の質』というコトバ。むしろ『キュー・オー・エル』と呼んでいるようで、完全なる医学用語だと思いきや最近は普通にテレビなどでも使われている感があります。このQOLという用語に対する一般の人と医療者の受け取り方に大きなギャップがある、という話です。

『医療情報をわかりやすく発信するプロジェクト』『医学系研究をわかりやすく伝えるための手引き』などというものの存在すら今日初めて知りましたから、この手引きのシンポジウム開催も今回の情報で初めて知ることができました(さすがに参加はできませんが)。こう言う取り組みは本当に大切なことだと思います。

 世界保健機関(WHO)の定める定義は「個人が生活する文化や価値観のなかで、目標や期待、基準または関心に関連した自分自身の人生の状況に対する認識」であり、先の手引きによると「病気や加齢あるいは治療により、それまでは当たり前にできていた、その人らしい生活ができなくなってしまったときに、その人がこれでいいと満足できるような生活の状態のこと」なのだそうです。そうです。QOLは元通りの生活に戻れることを前提にしていないのです。元通りにはなれないのだけれど、可能な限りそれに近づけるようにすることなわけで、『元通り』をイメージしている患者さんにとっては「全く話が違う」ということになるのは納得できます。”お互いまったく悪気はなく、自分にできる範囲で真摯に治療に向き合っているのに、用語に対する認識の違いで、不幸なすれ違いが起こっているケースは少なからずありそうです”というところに激しく合点してしまうわたしであります。

でも、どうでしょう。この意識のすれ違いが生じてしまっているのは、医療系側の説明不足、啓蒙不足というよりも,こういう情報に簡単に飛びついてくるマスコミ系担当者やテレビのコメンテーターが、事実誤認・誤解曲解したままにまことしやかな情報として流してしまったせいで生じたという要素が大きいのではないでしょうか。こういう取り組みは、こんな一部の医療現場のシンポジウムより、テレビ系の大々的な特集の方が多くの方々に知れ渡らせる手段としては有効なのではないかと感じています。是非、NHKとかで率先して手を上げていただきたいものです。

| | コメント (0)

世界睡眠デー

<3月17日は世界睡眠の日>というメールが、職場の職員健康管理室から全職員に配信されてきました。


”『世界睡眠の日』とは、睡眠の大切さを改めて知ってもらうため、世界睡眠学会が毎年3月の第3金曜日(春分の日の前の金曜日)に定めた、睡眠に関する正しい知識を啓蒙・啓発する日です”ということで、今年は今日、3月17日になるのだそうです。

ちなみに、9月3日も『睡眠の日』です。2011年に睡眠健康推進機構が制定した日で、「ぐっすり」の語呂合わせ(どこが?という気もしますが)なのだとか。

何はともあれ、とにかく『睡眠』。人間は”睡眠の動物”なのだということをもう少し意識して生活しましょう。生活習慣病も悪性腫瘍も認知症も予防の全てが睡眠で語られる時代なのですから。

質のいい睡眠で、カラダも心も健康に
ぐっすり眠るための6つの秘訣とは?

 

| | コメント (0)

消費意欲

「ねえねえ、この春物のベスト、なんか良くない?」

先日のゴルフの最中に妻が一緒に回っている友人にスマホの画面をかざして話しかけていました。

「そうね、かわいいね」「じゃ、このままここで注文しちゃうよ」「うん、よろしく!」

そんな会話がティーグランドで待っていたわたしの耳にも入りました。また、何か買うんかい? 最近毎週のように生協やらUNIQLOやらで見慣れない服を買っていたかと思ったら、今度はゴルフウエアかい? こっちは今月の我が家の出費が思いの外大きいから預金が底をつくのではないかと心配して、要らないものは買わないように気を引き締めているというのに。

「相変わらず、消費意欲が衰えんね!」と皮肉混じりに云ったら、「もちろんよ。この行動が世界経済を動かすんだから!」と云い返されました。あなたは偉い。わたしと同じくらいに小心者の小市民のはずなのに、その前向きな言動は賞賛に値するよ。甲状腺の手術の後から次々といろいろな病気になり、最近はアレルギー項目に問題ないものだけだと確認して買った生協のラーメンで激しい下痢を催すようになって何を食べるのにも疑心暗鬼になってきている状態なのに。「大丈夫よ、何とかなるよ」「あなたみたいに後ろ向きな心配ばかりしてたら、不幸になっていくだけだよ」といつも叱責してくれるのはありがたいというか、羨ましいというか。

それにしても、「今着てる服も最近買ったばかりなんやないんかい?」と云ったら、「違うよ、これは去年秋に買ったものだから」とな。ほう、それは”最近”じゃないんだね(笑)

| | コメント (0)

不規則睡眠と石灰化

動脈硬化リスクが上昇しやすい睡眠の取り方

CareNetで2023/03/13に配信されたこの記事。ここでも何度か書きましたが、わたしの冠動脈も大動脈も石灰化だらけで、いつ大きな合併症(心筋梗塞や動脈解離)が起きてもおかしくない状態なので、ちょっと気になって読ませてもらいました。わたしの中では、かつての喫煙と最近の高血圧以外にはリスクファクターはない気がしているからです。

米国・ヴァンダービルト大学のKelsie M. Full氏らは睡眠時間や就寝タイミングとアテローム性動脈硬化との関連性を調査し、45歳以上の場合に睡眠不足や不規則な睡眠であるとアテローム性動脈硬化の発症リスクを高めることを示唆した。Journal of the American Heart Association誌2023年2月21日号掲載の報告”というサマリー。もっとひとことで云うと、『睡眠時間の不規則性が大きい者は、冠動脈カルシウム負荷が高い』、そして不規則性の高い睡眠時間の人は、「現喫煙者の可能性が高い」「平均年収が低い」「勤務がシフト制もしくは無職の可能性が高い」「BMIが高い」傾向だったそうです。結局わたしの場合は、喫煙していたことと太っていたこと以上に救急医療にずっと従事していたことが発症リスクになった可能性がある、という結論でいいのでしょうか? まあ、今はタバコを止めているし、体重はしっかり痩せたし、不規則な仕事はしていないのだから、今さら何も修正することはできないという寂しい現実だけが残るということになるのでしょうけれど。
 

| | コメント (0)

ことの顛末

先々週の金曜日のお昼に突然襲ってきた水のように流れる鼻水の嵐は、その日の夜まで悩まされたものの翌日からは何事もなかったかの様に落ち着きました。「これが花粉症ってヤツか?とうとう他人事だった病気が自分にも襲ってきたか」と覚悟しましたし、翌日はわたしがリハビリに通っている理学療法士さん(子どものころから花粉症に悩まされているという)から「ようこそ、花粉症の世界へ」と笑われたりしたのですが、どうも花粉症ではなかったみたいです。「コロナだったんじゃね?」と妻にはいぶかられましたがたぶん回復の仕方からしてそれでもないでしょう。わたしの想像ですが、もしかしたら強烈な香水のせいかもしれません。あの日、午前中の診察当番だったわたしが、最後に診察した外国籍女性の香水の匂いがかなり強くて、夕方まで鼻に匂いがこびりついていたのです。あの匂いのためにわたしの鼻の粘膜がギブアップを出したとしても不思議ではないのではないかと推測しています。あれが何であったにせよ、このまま症状さえ出なければ何もいう事はございません。

ポリープ切除前後から続く体重の減少は、食事解禁になってからも現時点ではずっと維持されています。健診前と比べたらほぼ2キロの減少で、自分の記録を遡ってみると、2021年11月ころ以来の値が続いています。まあ何をしたということでもないし、病気だからということでもなく、食事制限で筋肉が少し縮んでしまったのかもしれませんが、地道に今を維持できるように監視いたしましょう。「体重が減った要因は酒を2週間飲まなかったせいだからこの機会に酒をやめたら?」と云っていた妻も、わたしにそんなことはできないだろうとタカを括っているのかさほどしつこくは攻めません。でもそれは一因かもしれません。別に禁酒・節酒をしようと思っているわけでもないけれど、なんか身体が思ったほど欲しないので、健診前に比べたらかなり量が減ってしまいました。「別にそんなに飲みたいわけじゃないしな」・・・ずっと意図的に口にしないようにしていたこのフレーズが最近妙にしっくりくるのが、ちょっとイヤだなと思ったりします(と書いてみたけど、実はそんなにイヤじゃなかったりして)。

| | コメント (0)

職員健診

毎年この時期(年度末が近いために各種団体の健診数が減ってくる時期)は職場健診が行われます。大所帯なので毎日20人前後の職員が一般の受診者に混じって受診することになります。診察をしたり読影をしたりする立場なのでどうしても個人情報に入り込まざるを得ず、知りたくもない情報を知ってしまうわけです。わたしもそうですが、うちの職場の平均年齢はかなり高くなってきたなと痛感する一方、とても若い職員さんもたくさん。こんなことを書くと誤解されそうですが、女性スタッフはわたしが思っているより実年齢が高い人が多いみたいで、どう見ても40代前半だろうと思っていた人が50歳だったり、30代半ばと思っていた人が有に40歳超えだったりで、ひとりでこっそり驚いたりしています。やはり第一線で働いていると若さが保たれるものなのかもしれません。

そしてもう一つ驚いたことは、まあまあ大きな病気の治療をそう遠くない最近にした人が少なくないということです。想像だにしない病気が記載されている問診票を見て、間違いじゃないの?と二度見したり。みなさん、そんな経歴なんか全く表情に出さないどころか、いつも何もなかったかのように明るく溌剌とした笑顔で仕事をこなしておられます。なんか、妙に力をもらえた気がします。わたしも妙齢になって何かと想定していなかった病気がいろいろ出始めてきているのですが、彼らの姿を見ているとそんなものちっぽけな可愛いものだと思えるようになります。

そして、これだけたくさんの病気の治療を早期発見して受けているスタッフが多いということは、それだけ健診の内容が充実しているおかげだともいえましょう。帳面消しの形だけの健診ではないということを証明してくれています。ありがたいことだと思います。

| | コメント (0)

段ボール箱

職場の医局の片隅の丸椅子の上に空の段ボール箱が置いてありました。なぜそこに段ボール箱があるかと云えば、その中にデパートの紙袋に入ったもの(多分お菓子? 知らんけど)が入れられていたから。どこかに挨拶に行くときに持って行くのか、今年度末で退職される非常勤医師に渡すためか、どちらかだろうと思っていましたが、それがなくなったということは、どちらかの目的(あるいはそれ以外の使途で)が達成されたものと推測されます。

で、この大きな空の段ボール箱。どうしてそのままここにあるのだろう?と思ってしまうのはわたしの性分。用途が達成した時点でこの箱は使命が終了したのだから、これも一緒に片付けてしまえばいいのにと思ってしまうわけです。そこに空箱があるからといって、わたしたちが勝手に何かを入れて良いわけでもないし、その邪魔なスペースが空くととても助かるのに。「そのうちまた同じ目的で使うかもしれないし」という人もおりましょうが、それならそのときに改めて持ってくれば良いこと。

整理整頓を日常で意識している人間はどうしてもそんなことを考えてしまいます。わが家でも、掃除や整理整頓があまり得意でない妻は買い物してきた野菜や果物、あるいはインスタント商品を買ってきたときのビニール袋のままキッチンに並べていますが、最後の一個を使い終わって中身が空になってもそのまま袋だけが脱ぎ捨てられたスカートのようにいつまでも残っています。これが気にならない人はちっとも気にならないみたいなんだよなーとボヤきながら、袋を畳んであるべき位置にしまうと、元あった場所にはしっかりと新しいスペースが生まれます。

こういうことにこだわってしまうのは、わたしだけなのでしょうか。

| | コメント (0)

手のひら1枚分

きのう書いたフレイル予防のためのタンパク質目安量で『手のひら1枚分』というのは、手のひら1枚の大きさの食材という意味のようです。いただいたスライドによると、

木綿豆腐1/3丁100g(タンパク質量約7g)
絹ごし豆腐1/3丁100g(約5g)
納豆1パック35g(約6g)
卵1個 可食部50g(約6g)
白身魚・青背の魚80g(約16g)
赤身の魚80g(約18g)
牛・豚もも肉80g(約17g)
鶏もも肉80g(約15g)
鶏むね・ささみ肉80g(約18g)

などが『手のひら1枚分』の食材だそうです(サルコペニア診療ガイドライン2017年版参考)。ちなみに、わたしは昼の愛妻弁当に卵焼き、夕食時に木綿豆腐1/2丁~1丁が基本だから、あとは朝だけだなー。

 

| | コメント (0)

高齢者のタンパク質

CareNetから『フレイル予防のタンパク質量の目安』という医療者向けスライドが配信されてきました。「高齢者はタンパクが足りないから積極的にタンパクを摂るべし」と云われる一方で、「腎機能に一番悪影響を与えるのはタンパク質なのに高齢者は総じて腎機能が低下している」という相反するジレンマに悩んでしまう現実があります。

高齢になると、咀嚼力の低下、食欲不振、嗜好の変化などから、炭水化物の多い食品(米飯、パン、麺類など)に偏り、タンパク質の多い食品が不足しやすくなることがあります
というのは知っていましたが、
「お金がかかる」「調理に負担がかかる」「腐りやすく食べきれないため買わない」などから、タンパク質の多い食品を避けているケースもあります。昨今の新型コロナウイルスによる経済上の問題や外出自粛の影響もまた、一因となるかもしれません。
というのを読んで、「たしかにそうだ!」と合点したわたし。自分がそういう年齢になったときに直面するのは経済的問題であり、もしわたしが独居になったらたぶん料理なんかしないだろうからまさしくそうやってタンパク不足になる危険性はすぐに生まれそうに思います。

タンパク質の必要量が壮年・中年期に比べて高齢者で多くなる理由は、”タンパク質摂取後の骨格筋の同化に対して、高齢者では抵抗性を示す”(つまり、高齢者ほど筋肉に変換するのにタンパク質の量が多く必要になる)ことと、”高齢者では加齢とともに食事摂取量が減少し、エネルギー摂取量が低下”するからだそうです。他人事ではない高齢者のタンパク質不足問題。指導者の立場と云うよりも自分自身のために今から勉強して実践しなければなりますまい。

体重あたり1g/日以上摂取が推奨され(体重60kgならタンパク質60g以上摂るべし)、”タンパク質を多く含む食品(肉・魚・卵・大豆)を朝・昼・夕の主菜に「手のひら1枚分」を意識して毎回食べるようにしましょう”だそうです。

 

| | コメント (0)

見張りがいないと

私は、地元熊本市の『げんき!アップくまもと』という健康アプリを使って日頃の健康管理をしています。適宜歩数を確認しながら、「よしよし、いつもと同じペースだな」とか「今日は目標より1000歩足りていないからちょっと余分に歩かないといけないな」とか、意外にこのアプリにがんじがらめに制御されながら生活しています。血圧や体重も記録するので、ときどきグラフを眺めながらほくそ笑んだり不安になったり。「今日は雨だし仕事が忙しいし、ちょっと無理じゃないかな」と言い訳しながらもアプリを開けると「もうちょっと歩けばノルマ達成できるんじゃない?」と思い直して無意味にコンビニまで歩いてみたり、体重が思いの外減っていると維持できるように夜の間食に手を出さないようになったり・・・誰に強要されるわけでもないし、成績がいいと褒美をもらえるわけでもないのに、意外に真面目に制御されるに任せている状態です。

そのアプリが、3月1日から3日間のメインテナンス期間に入っています。ポイントをリセットして新年度にリスタートさせるためで、毎年3月初めにはこのアプリが作動しない期間があるのです。この期間は全く反応していませんから、アプリ的には私の行動は完全に無視状態です。毎年のことなので解ってはいるのですが、いつもの生活を送りながらもどこか落ち着きません。「歩いてもなぁ、どうせカウントされないしなぁ」「スクワット、今日は疲れたからちょっとお休みしようかなぁ」と妙に自分に甘くなります。自分で決めたことはきちんとこなさなければ自分に負けた気がするから、アプリの作動と関わりなくいつもと変わらない日々を過ごす自信があったのだけれど・・・見張りがいなければこっそりサボろうとする、そんな人間だったんだなぁ。情けないなぁ。昨日の晩は食後のお菓子も半端なく食べた。今日は体重を測らなかった。たぶん、明日も計らない。測っても記録できないから。

| | コメント (0)

ちょっと見ない間に

サッカーJリーグがいよいよ開幕し、今年は入場制限もなく声出し応援も完全解禁になりました。テレビを観ていても「何かいつもと違うな」と思っていたら、それが応援の声だった事になかなか気づけませんでした。前はこれが当たり前だったのに、異常な3年間のおかげでかえってこっちの方が異常に感じられるほど、世の中は、そしてわたしたちの感覚はすっかり変わってしまっています。3年前には制限だらけの戒厳令の中で、日常生活を完全にオフにし、数多くの代替行為が生まれました。ヴァーチャルの社会はリモート勤務やWeb学会(会議)を当たり前にし、メタバースの概念を一気に浸透させ、テイクアウト食事でもレストランで摂る食事の水準にまで質を上げる事に成功しました。あの時にはその異常さに慄いていたものですが、もう全てが解禁になったからといって、別に3年前までのやり方に戻さなくても良いのじゃないの?と思うことも少なくありません。

先日、笑福亭笑瓶さんの急逝に伴うお通夜の席に集まった芸能人のインタビューをみましたが、この人誰?と云いたくなるくらい、ちょっと見ない間にみんな年寄りになっていました。きっと3年ぶりに旧知の友人や同級生たちに会ったら、自分の思っている以上に風貌がかわっているのでしょうね(もちろん、わたし自身もだけど)。

マスク解禁が間近になり、移動制限のない社会の中で皆が一気に蠢き始めました。今の生活で特に困りはしないのに、どうしてそんなに無理してカネ使いながら動きたがるのだろう?と思っていましたが、全く変わりないどんよりとした空気の中に3年も埋もれていると、パーっと発散させたい!と思う気持ち、こんなわたしでも分かるような気がしてきました。でも、やっぱりあちこちの行楽地や街中が芋洗い状態の人出になっているのを見ると、あの中に飛び込んでいく勇気はまだわたしにはありません。それでも、いくつかの大きな催し事を経て(熊本の場合は10日ほど前の熊本城マラソンなど)もコロナ新規感染者数が急増する様子でもないみたいなので、少しずつ慣れていきながら高い敷居を跨げるようになるのでしょうか。

3年という月日は意外に短く意外に長く、前がどうだったかなんて思い出せないものも少なくない中で、アフターコロナという言葉自体も死語になるときがもうそう遠くないであろうことを感じている今日この頃です。

| | コメント (0)

« 2023年2月 | トップページ | 2023年4月 »