ハクモクレンの顛末
わたしがワンズの散歩をする公園にはその入り口に大きなハクモクレンの木があります。
今月初めにポツポツと白い花が咲き始めたら、その3日後にはほぼ満開になりました。遠くから見ても壮観で、眺めているだけでも人生観が変りそうな、そんなステキな花です。だから、木の下ではスマホを構えて写真を撮る老若男女がたくさん集まってきて華やかな空間になっていました(もちろんわたしもその一人。毎日SNSに写真を上げていました)。でも、何日もしないうちにハラハラと落ち始め、足元には皆に踏みつけられて茶色に変形してしまった無惨な花の残党。まだ残っている白い花には目を向けて「だいぶ散ってきたな」などと感慨深げに眺める人はいても、「踏み躙られてかわいそうにな」と嘆きながら地面を眺める人はおりません。せいぜい、眉間に皺を寄せながら「滑らないように気をつけなきゃ」と睨んで足早に通り抜けていく人が居るくらい。その手のひらを返すような態度の豹変に何だかわからない苛立ちを覚えてしまった今年の春。きっと、その朽ち果てた花の姿に、老いゆく自分を重ねてしまったのかもしれません。
でも、ハクモクレンの花にとってはそれが当たり前で、変な憐憫の感情なんて求めてもいないことでしょう。もう今は花は全て散り、若葉が萌え始めてきています。夏にはセミが幹に抜け殻を残して旅立っていきます。決して木陰を作れるような大きな存在ではありませんが、公園駐車場の入り口に昔から変わらぬ姿で標識のように佇みながら、公園を出入りする老若男女を眺めています。落葉樹と常緑樹の各々に役割があるようにこの数日間だけの白い大きな花の儚い生にも何か意味があるのでしょう。だから、落ちてしまった花の行末に自分を重ね合わせて嘆くよりも、皆に癒しを与えて輝いている数日間をしっかりと愛でて喜んでおくのが得策だなと思う事にいたしました。
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