心臓病の本
定期的に執筆しているコラムの締切が迫る中で、ちょっと参考にしようと思ってわたしのかつての恩師の本を何冊か引っ張り出しました。彼が昔わたしに話してくれた逸話がどこかに書かれていたはずだと思ったのです。でも一生懸命探したけれどその内容はどこにも見つけられず、諦めました。で、そのまま久しぶりに恩師の書いた本を読み返してみました。当時は、「すごいなー」と感動したものですが、今読むと(失礼な云い方ですが)大したことは書いてない気がする。文章もあまり上手いとは感じません。そういえば、かつてはわたしも共同執筆や自治体の機関誌の連載やらで積極的に書いて啓蒙啓発に躍起になっていたことを思い出しましたが、当時も同じようなことを同じように書いていたなぁと思うと、逆に今、こんな内容にあまり興味が湧いてきていない自分に驚きます。動脈硬化のはなし、動脈硬化のメカニズム、心臓病のはなし、動脈硬化予防のはなし、生きがいのはなしなどなど。動脈硬化予防の啓蒙啓発は重要だから、それを多くの人に分かってもらうのが予防医療に携わる循環器内科医の使命だと思って頑張ってきたわけですが、どこかある時点から、「動脈硬化予防のために人生を送っているわけではないし、そんなことばかりにとらわれていると何のために生きているのかわからなくなるのではないか」という思いの方が強くなったことがきっかけかもしれません。生活習慣病予防、動脈硬化予防はきわめて重要で、がん撲滅よりもはるかに自分自身の日々の心がけにかかっていることだということになんら変わりはありませんが、おそらく、世の中が一次予防(病気にならないように予防する)からゼロ次予防(健康などを意識しなくても、普通に生活しているだけで健康になれる社会作り)の時代に移ろうとしていて、そうなるように社会が動いていくのが理想だという想いの方が自分を突き動かすわけです。偉そうなことを書きながら、ゼロ次予防的な働きかけを具体的に何一つしているわけでもありませんが。
書いているうちに少し内容が逸れてきたことに気付きました。恩師の心臓病の本を読みながら、自分も本当にこんなに難しい内容を書いたり話したりしていたのだろうか?と、自分のことなのに何か遠い昔のことのような錯覚に陥り、昔、臨床医として曲がりなりにもアカデミックな世界を突き詰めていた時期があったなぁと思い、でも一方で恩師が書いてあるような内容は当時は最先端でアカデミックなことだったかもしれないけれど、今や一般市民も知っているような陳腐な知識だから取り立てて偉そうに講釈をたれる内容でもないのではないかとも思うところ。多分、自分の思い違いなのだろうけれど、そう思うからこそ、今は昔のような世界に戻っていきたい気がしないわけなのだろうと自己分析しております。
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