いつもと同じ、と云っていられないかも?
『肝機能検査の指標であるALT値が30を超えていたら、プライマリ・ケア医やかかりつけ医による肝疾患リスクの確認が必要』・・・先月開催された第59回日本肝臓学会総会で『ALT>30を指標とする”奈良宣言”が公表されましたが、これはかかりつけ医と消化器内科医が適切なタイミングで診療連携することで患者の肝疾患の早期発見・早期治療につなげることを目的に設定された判定基準だそうです。
"宣言後に本指標を無視してしまうと、注意義務違反が生じる場合もある。「肝硬変や肝臓がんは年数を経て病態が進行していく疾患なので、ある患者がこの宣言以降に人間ドックでALTが35だったとしましょう。しかし、医師は基準値内だからと次の行動を起こさず、翌年にその患者が肝硬変になって“医師に検査を進めてもらえなかった”と医療裁判を起こしたらどうだろうか」と例示し、「ある弁護士からは医師側が敗訴する可能性が十分ありうるといった見解を受けたため、医療安全の観点からも医療者に周知していく必要がある」と医師側のリスクを指摘した。"
と書かれています。さてさて、人間ドックや健診でALT>30は決して少なくありません。これを全て『要精査』指示で専門医への紹介状を出すとになると正直なところ外来機能はパンクするかもしれません。健診機関から診療情報提供書を出しても、受診先では「この程度は大丈夫。脂肪肝だと思うので運動と食事に注意して、後は”次の健診でフォローしてください”」と説明されてしまいます。これをやられても健診では何もしてあげられないので結局は受診者が受診難民になってしうことになるのです。だからわたしたちは若干高めでも変化がなければ「経過観察」指示にしてきた歴史があります。”奈良宣言”とやらを実効性のあるモノにするなら、医療訴訟云々で脅すのではなくて、受診者だけでなく医師へもきちんと啓蒙啓発して意識の統一を促すことがまず必要なのだと思います。ほかの生活習慣病に対する啓蒙啓発と同じ(あるいはもっと大変かも)でなかなか厳しくできないのが人間のサガですから、普及啓発にはかなりの労力と時間を要するものと推測します。人一倍の熱意を持ってがんばってほしいものです。
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