「あなたも髪が薄くなってきたね」
先日、汗だくでゴルフしている最中に妻がわたしの後ろ頭を眺めながらしみじみと云いました。
「本人は気にしているんだから、そんなこと簡単に口にしたらダメよ」
一緒に回っていた友人がすかさずそう云いました。
「自分でもわかっているから、そんなに気を遣わなくても大丈夫だよ」
かえってわたしが気を遣いました。
髪が白髪だらけになって、髪の隙間が目立ってきていることは心得ています。前髪がゴマ塩風の白髪だから後ろもその程度だと思っていたら、ある時(学会出張先だったか)、エレベーターに乗った時に目の前の画面に映し出されている(犯罪防止用に箱内で写された監視カメラ映像)白髪の男性の立ち姿を見て「だれや、このオッさん?」と思わず口にしたのが、自分の姿を客観的に見てショックを受けた最初でした。だって、それわたしに間違いないのです。その時、エレベーター内にはわたししか乗ってなかったのですから。久しぶりに会った知人から「しばらく見ない間に真っ白になったね」と云われる度に、「やはりわたしの後ろ頭は真っ白なのね」と諦めたものです(だって、鏡に映る自分の前髪は相変わらずゴマ塩なのですから)。
父は若い時からハゲ頭でした。母方の叔父は皆髪が多くて白髪でしたから、自分はきっと母方の遺伝子を引き継いだのだと思っていました(髪型以外の風貌はほとんど父を引き継ぎましたが)。そうこうするうちに初めてショックを受けた時から10年くらい経ってしまいました。先日、外勤先の企業のエレベーターに乗ったら、例の監視カメラ映像が映し出されました。まさしくこれはわたしの立ち姿に間違いない。髪も真っ白。「ん?」 なんか違うぞ。後ろ頭のつむじ辺り、白くないぞ。肌色だぞ! 「このじいさん、誰!」横に他の人が乗っていたから今度は心の中で叫びました。
そうか、あの時に妻が云っていた「薄くなったね」はこのことだったのか。思わずつむじ辺りを触ってみたけどちゃんと髪の感触はある。昔、円形脱毛症になった時の様な手触りではない。そうか、だからこの状態に気づかないでいたのか。客観的に映し出す写真って鏡で自分が見る自分の姿と全く違う情報を教えてくれる。ありがたいけど、やっぱり、罪作りだ。ハゲ頭に気付いてなかったのがショックなのではなく、まだまだ若作りだと思っていた自分が客観的にはしっかり年寄りに見えていたのだと知らなかったのがショックなのであります。こういう“事件”の後、人は突然加齢に加速度を増させるものです。アンチエイジングの敵は物理的な“老い”ではなく、精神的な“老い”だという事をわたしはよく知っています。負けないぞ!
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