心電図を読影するのは私
<健診で発見された心電図異常で将来の心血管疾患リスクが分かる 将来の重症化予防に貢献>
”京都大学などは、健康診断で心電図異常が指摘されると、将来に心血管疾患(CVD)の発症リスクが上昇することを明らかにした。全国健康保険協会(協会けんぽ)の生活習慣病予防健診、および300万人超の医療レセプトのデータを用いて解析した。
「研究結果は、日本の健康診断で一般的に行われている心電図検査が、心血管疾患のリスク評価に有用である可能性を示しています。心血管疾患の負担が世界的に増大しているなか、簡易で安価な心電図を用いた集団的なアプローチが再評価される可能性があります」と、研究者は述べている。”(保健指導リソースガイド2024年07月22日公開)
どういうことかと云うと、
「軽度心電図異常や重度心電図異常が指摘された加入者は、正常所見だった加入者に比べて、将来にCVDの発症リスクが上昇することが示された。さらに、軽度心電図異常の種類だけではなく数が多い場合に、CVD発症リスクや重度心電図異常発症リスクがより高くなることも分かった。」
「軽度心電図異常やその数は、将来の重度心電図異常発症のリスクと関連があることも分かった。これらの関連には、性別や年齢、生活習慣病などの属性による違いはみられなかった。」とのこと。
書いてあることは良く分かるし、健診に従事している循環器担当の医者としては健診の心電図を心疾患の予後評価に繋げていただけることは大変うれしいのですが、読影をしている者としては、「ホントにそれでいいのか?」という懸念もあるのです。『軽度異常』という範疇の中には、洞性徐脈も入るのでしょうか。洞性頻脈ならともかく、洞性徐脈はむしろ「正常」より良いのかもしれない(「一生の脈拍数が決まっているから徐脈の方が長生きだ」と云われています)。反時計方向回転とか異所性調律とか洞性不整脈とかも、その大部分は体格による心臓の位置ずれとか年齢が若いとかの要素でしかありません。あえて所見として指摘しているこれらの所見名も『軽度異常』の中に含まれてしまうのだとすると困ったことです。そういうものは『正常』『異常なし』として無視しなければならないということになります。今回の研究からすると、私の読み方は異常者をたくさん生み出す諸悪の根源になるやもしれないということになるのでしょうか。
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