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あんたは大谷翔平か?

わたしが高血圧症の治療のために自ら処方してからたぶん20年近くになります。自覚症状はなかったつもりでしたが服用を始めたら妙にアタマがスッキリして、降圧のおかげなのだなと実感しました。でも、ここ数年、毎朝測定する血圧は若干高めになり、何度か測定すると140/90mmHgくらいには落ち着くのでそのままにしていました。ところが、外来受診したときに「先生、血圧180mmHgもありますけど、これで良いんですか?」と看護師さんに聞かれ、そういえば歯科受診したときも診察室前の自動血圧計に手を突っ込んだときもそんな値になっていたけれど、「朝の血圧は大丈夫なのだから問題ないはず」などと自分をごまかしてきました。さすがに気になったので循環器内科の部長に相談したのが1年前。24時間血圧計を装着してみたら寝ている最中以外ほぼ高値だということが判明し、内服薬を大量に増やされて今に至っています。今回も高血圧の自覚症状はなく、しかも服用量を増やしていつも120/80mmHg以下にコントロールしても自覚症状の変化がありません。これだけ自覚症状がなければ自ら服用しようとも思わないし、「変わりがないから勝手に止めた」という患者さんの気持ちもよく分かります。

「血圧はそんなに下げるべきではない。高齢になればなるほど高めの方が安全」とか「血圧の薬は飲み始めると止められなくなるからできるだけ飲まない方が良い」とかいう都市伝説は20年以上前から聞きますが、いまだにそんなことを云っています。でも現代社会は大きく様変わりしました。おそらく当時の壮年が高齢者になり長年の高血圧曝露が続いた結果として、今一気に心不全が問題になっているのではないかと思われます。あの説が出始めた頃の高齢者はもっと前の社会で若い頃を生きてきた人たちであり、今の私たちとはそもそもの生きてきた環境が違います。

「もう90歳を超えた隣のじいさんは若い頃からヘビースモーカーだったけど今でも元気でピンピンしとる」とか「わたしの地区の80歳のばあちゃんは若い頃からめちゃくちゃ血圧が高いけど薬も飲まずに今でも野良仕事している」とか、そんな身近な事例を並べて、だから自分は禁煙しない、血圧の治療は受けないと云い張る人はいまだに多い。でも、その”じいさん””ばあさん”はごく一部の特殊な人たちなわけで、明らかにわたしたち凡人とは違いますのよ。「大谷翔平にできたことなんだから、オレにもできる」と云っているようなものなのじゃないでしょうか。

 

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