ステージA
夏の頃に、心臓リハビリの研究会に参加したときに初めて聞いた『ステージA』と云うことば。心不全の程度を表すものでAからDまであるのだそうな。「ACCF/AHAの⼼不全ステージ分類」というもので、わたしが臨床にいた頃に教わった心不全分類の「NYHA心機能分類(I度からIV度)」とはまったく別の概念です。
●ステージA:<高リスク>高血圧、糖尿病、肥満など心不全に繋がるリスクがあるものの、心臓の病気や心不全症状がない場合。
●ステージB:心臓の病気があるものの、心不全症状がない場合。
●ステージC:心臓の病気があり、むくみや息切れなど心不全症状も現れている場合。治療に反応する状態。
●ステージD:治療しても日常的な身体活動が制限される状態が続く場合。さまざまなお薬を使っても治りにくい、末期心不全の段階です。
と分類されます。怖いのはステージは進む方向にしか行かないことです。心不全などというモノ自体が全く他人事のように思っている人も多いでしょうが、決してそんなことはありません。自覚症状がないままに進行していく病気として現代病の中では最も厄介なものの一つに挙げられています。「健診で、心電図やレントゲンや診察で何も云われていないし息切れや動悸も経験していないから全然無縁のもの」と思っている人は少なくないでしょうが、このステージ分類でお分かりのように、ステージAは単なる生活習慣病です。これが心不全の入り口でありここから進む方向しかないということは、高血圧や糖尿病を野放しにしていてはならない!と云うことに他なりません。わたしが循環器内科で治療していた頃は「高血圧や糖尿病は動脈硬化を勧めて突然心筋梗塞や動脈解離を起こすから怖い」と云うのが主流で、「ほったらかしていると最後は心不全になるぞ」とは知ってはいましたが、『高血圧性心臓病』などというモノは現実には大した問題ではないと考えられていました。今はそうではありません。むかしは心不全が収縮障害によるもの(HFrEF)という概念だったのに、その前に拡張障害が引き金になる(HFpEF)のだと云うことが分かってきたからだと思われます。
つまりは、『甘く見るなかれ、高血圧・糖尿病』ということであります。
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