学問・資格

ベクトルと心電図

「”ベクトル”なんて聞いたこともありません」

先週、うちの施設内で心電図の勉強会をしているときに2人の若いスタッフがそう云いました。学校の数学か物理で習ったでしょうが! ベクトルの概念が分からないと心電図を理解することはできません。勉強会のあとで、俄か数学教室になりました。

ベクトル(Vector)」とは、”空間における大きさと向きを持った量”のことを云います。「分からなかったら帰ってWikipediaで勉強してごらん」と云ってみたものの、今調べてみたら大したことは書かれていませんでしたし、ちょっと詳しいのになるともう全くチンプンカンプンな数式にまみれてお手上げ(笑)

力は、始点と方向と大きさの3要素でできており、これを1本の矢印(→)で表します。矢印の起点が空間における力の始点(力が起きている場所)、矢印の長さが力の大きさ、矢印の方向が力が作用する方向です。心臓の場合は右上後ろが始点でそこから左下前に向かって矢印を引くことができます。この矢印を心電図で表すために重要な概念が、「力の合成と分解」・・・この辺りでアタマが放棄してしまった過去があるのではないでしょうか。矢印で示された力をどこかの一点から眺めたとき、三次元を二次元で見ることになります。その矢印を、自分に向かう力の成分とそれに直角の自分に関係ない成分とに分けるわけですが・・・分かるかなあ。これが理解できると、力の考え方がすっきり分かるようになって、心電図波形が簡単に理解できるのですが・・・ここにこれ以上書いても埒が明かないかもしれません。

ちなみに、「ベクトル心電図」のはなしではありません。

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文章力

毎年、施設の業績を示す『年報』を発行します。今年もその作成作業が始まり、これまでの”がん”の解析だけではなく”生活習慣病”のデータ分析も加わることになりました。スタッフの皆さんが仕事の合間を縫って日夜がんばっています。そのチェックと推敲・校正をするのがわたしの仕事なのですが、この1ヶ月、毎日毎晩その仕事だけでヘトヘトになりました。

最近の若い方々は、表現力が、ない。データ分析力はすばらしいけれどそれを文章にして他人に伝える力が弱い、と痛感します。何も知らない人が読んでわかってもらえる、その前に最後まで読んでもらえる文章を書くには、当然技術が要ります。例えば、「男の方が女より多い」と書くのと「女の方が男より少ない」と書くのがどっちでも同じでしょ!と思っているようでは、どうしようもありません。何を伝えたいのか、何を強調したいのか、まずはデータからストーリーを組み立てないと。

そして、なぜだか知りませんが、みんな選ぶことばが難しい。公文書にありがちな、できるだけ硬い漢字でがっちり固めて、なんとなくわかるけど曖昧で実はよくわからない、だからあまり突っ込まれない、みたいな表現・・・彼らの報告書や学会発表スライドでよくこの表現を見ますから、これが業界の習慣なのでしょうか? 字数制限があるわけじゃなし、読むのは一般のヒトなんだから、もっと平易に表現し直したら?とアドバイスすると・・・どうしていいかわからなくなるみたいです。

今回は、三度、四度以上に書き直させたものばかりでしたが、何とか出来上がりそうです。是非今回の文章書きがいい経験になってもらえるといいなと思います。

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すすめる

パソコンで文章を書く機会が多くなって、自分で文字を書かなくなった分だけ急速に漢字を忘れてきているのは事実です。でもその一方で、ワープロ辞書は漢字の選択肢を示してくれます。これは意外に勉強になります。

最近わたしが使い方に悩んでいる単語に「すすめる」があります。<前にすすめる>という意味の「進める」はわたしにも分かりますが、「この商品はおすすめです」とか「○○することをおすすめします」とか云う場合の「すすめる」にどの字を充てるのか。「勧」「薦」「奨」・・・正直なところ、どれもほとんど同じだと思っていました。

これをワープロ辞書の選択肢で見てみると、
 勧める→相手に誘い促す。勧誘、勧奨、勧告。
 薦める→人や物の良い点を挙げて採用を促す。推薦、自薦、他薦。
 奨める→=勧める
とあります。「なるほど~」と一旦は唸ってみるものの、何かあやふやで結局自分が使うときに今ひとつ自信が持てません。こういうときにはネット検索・・・なんと「薦める、勧める、奨めるの違いは?」というテーマでYahoo知恵袋に毎年出ていました。

(前略)~「入会(転地・旅行・出席)を勧める。 食事(たばこ・座ぶとん)を勧める。のように、『他人に働きかけて、何かをするように説く』『他人の意志を動かすように説く』意では、『勧める』が使われる。さらに、クラス委員(候補者)として薦める。 恩師の薦めによって就職できた。 良書を薦める。のように、『ある人や物事が採用されることを望ましいとして、他人に説く』意では、『薦める』が使われる。」(文化庁「『ことば』シリーズ」から)・・・つまり、「勧誘する」という場合には「勧める」を、「推薦する」という場合には「薦める」を使うということですね。~

・・・ん~。「推薦したいから勧誘する」場合はどっちなのかなあ?

ちなみに同書によると、「『おすすめの+名詞』という場合は、一般に『お勧め』を使う(例「お勧めの映画」「お勧めのレストラン」)」そうです。これはクリアカットでうれしいけれど、上記の理屈が完全無視なのはなぜかしら?

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カオス理論

<カオス=chaos=混沌>

混沌(こんとん)ということばを初めて目にしたのは中学生のときでした。むかしまだ宇宙に何の秩序もなかった状態、それをカオス=混沌という・・・何かの小説にでもでてきたのかもしれません。何かものすごく大人の世界のことばのような、そんな感動に浸り、何度もこの漢字を書いてみたことを思い出します。何もかもをきちんと秩序正しく並べることが正義だと信じていた自分にとって、「混沌」は実は一方で最大の憧れだったのかもしれません。それが潜在意識にずっとひっかかっていたから、いつの間にか既成概念を疑うことばかりする今の自分ができあがったと考えると、妙に納得できます。

先日、まったく違うことを検索していて、映画「ジュラシック・パーク」の中に出てくる「カオス理論」とやらのくだりに何となく目を留めてしまいました。「カオス」と「カオス理論」はちょっと違うもののようです。

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マルカムとジェナーロ(弁護士)の、カオスに関する会話:上・147ページ

「物理学は、ある種のふるまいを説明するにあたって大きな成功をとげた。軌道をめぐる惑星、月へいく宇宙船、振り子、バネ、回転するボール、そういう方程式なら数学者はやすやすと解ける。何百年も前から、われわれはそうやってきた」
「わかる」とジェナーロ。
「ところがここに、物理学が苦手とする、まったく別種のふるまいがある。たとえば、乱流に関することはみなそうだ。蛇口や噴水から出る水。飛行機の翼面から流れる空気。気象。心臓から押し出される血液。このような乱流現象は非線形方程式で記述される。これを解くのはむずかしい。というより、解けないことが多い。したがって物理学には、この種のできごとをすこしも理解できない。ところが10年ほど前に、これらを説明するまったく新しい理論が登場した。それがカオス理論と呼ばれるものだ。
 このカオス理論は、もとをただせば1960年代に、コンピュータによる気象モデルを造ろうとする試みのなかからうまれたものだった。気象は一つの巨大で複雑なシステムであり、これは陸地や太陽と相互作用する地球の大気の働きにほかならない。この巨大で複雑なシステムの働きはつねに理解を拒否してきた。したがって、われわれには気象を予測できない。初期の研究者たちがコンピュータ・モデルから学んだものはそういうことだった。理解はできても、予測することはできない。天候の予測は絶対に不可能なんだ。その理由は、このシステムの働きが初期条件に極度に依存し、敏感に反応するからだ」
「もうわからない」とジェナーロ。
「大砲である重さの砲弾を、ある速度、ある角度で発射したとしよう。つぎに、まったく同じ重さの砲弾を、またっく同じ速度、同じ角度で発射する。どうなると思う?」
「その2発はだいたい同じところにおちるだろうな」
「そのとおり」とマルカム。「それが線形力学だ」
「わかる」
「ところがここに、ある気温、ある風速、ある湿度でスタートする気象系がある。これとほぼ同じ気温、同じ風速、同じ湿度でスタートした気象系は---第1の気象系と同じようにはふるまわない。急速に変化していって、第1の気象系とはまたっく異なるものになってしまう。快晴のかわりに雷雨になることもある。それが非線形力学だよ。初期状態に敏感で、微妙なずれがどんどん増幅されてしまうんだ」
「わかると思う」とジェナーロ。
「これを一名、バタフライ効果という。北京で蝶々がはばたけば、ニューヨークの天気が変わるというやつだ」

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数I

「必ず解ける」といえば、数学です。算数の教師をしていた父の影響からか、数学はわりと好きな教科でした。

今はどうなっているのか知りませんが、わたしが高校生のころの数学には、数I、数IIB、数IIIがありました。一般的には数Iが1年生、数IIBが2年生、数IIIが3年生(ただし理系大学を受験する人だけ)で教わるものと認識していましたが、この中で一番むずかしいのはどれだかご存知でしょうか?理系の人だけが教わる数IIIが一番むずかしそうに思われがちですが、実は、むずかしいのは群を抜いて<数I>だと思います。

数IIIはとても高度で緻密な計算を短時間にしなければなりません。でも、地道にきちんと展開していけば、必ず解けるのです。この事実にはほとんど例外がありません。焦らず計算間違いしないようにすれば絶対に解けます。まさしく、先日書いた<だごコード>を解くのと同じ世界です。これに対して<数I>は、そうは行きません。一言で云えば「ひらめき」です。高校1年生の授業中に教わるのは基礎の基礎ですから一見簡単に見えますが、この基礎の基礎の世界には大きな落とし穴があるのです。解くための考え方が何通りもありながら、そのいずれもが「ひらめき」であり「センス」なので、何もひらめかないとまったく解く糸口がつかめないままタイムアップになります。屈辱的な敗北となり、まったくお手上げです。

基本的にセンスのないわたしにとって、<数I>は難攻不落の大きな壁でした。試験では数IIBや数IIIで泥臭く点数を稼いでいましたが、実は<数I>をスマートに解けるのが昔から憧れでした。

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