心と体

スクラブ

40年来親しんできた職場の白衣(今の職場になって20年か?)が今月替わりました。病院はもうかなり前から紺色の共有スクラブでしたが、私たちの部署は医療行為をする所ではないので「おもてなし」という意味も含めてきちんとした白衣が支給されていました。でも、このたび、病院全ての職員のユニフォームを上下ともに新調することになり、この機にうちの部署も病院のものに合わせることになった模様です。徐々に新しいモノに替わっていく中で、医者の新スクラブ発注は少し遅れている模様ですが、さすがに回りが全部違う彩りになていく中でむしろ白色の白衣が”悪目立ち”してきたので、わたしも思い切って上下紺のスクラブに替えてみました。「あ、先生も替えたんですね」「かっこいいですよ」とか云ってくれるものの、当のわたしはやっぱりちょっと恥ずかしい。こんないでたちは臨床で心カテしていた頃の術衣を着たとき以来なのですから。

ま、そのうち慣れるでしょ。時代ですからね。

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AIエグすぎる

人間ドック健診医学会の専門医資格更新のためには、セルフトレーニングというのを受けて5単位をもらうことが必須です。問題数は25問で、採点料の2,000円が必要です。わたしはまだ4年ほど余裕はあるのだけれど、できることは早めに終わらせておこうと解答に取り組んでみました。

他の領域の専門医と違って、人間ドック健診医学会の専門医の問題は多岐にわたっています。内科領域だけでなく婦人科や遺伝子医学や法律や倫理の世界まであるので、到底実力だけで答えられる代物ではありません。だから、各領域の専門のドクターに聞くとともにとにかくパソコンで検索しまくるのが常です。昔は各々の領域の専門書を読みあさったり、専用の問題集を買ったりして答を探したものですから、かなり便利な時代になりました。それでもパソコン検索は正しい情報と同じレベルで誤情報も溢れていますから、各々で裏を取ることが大切なのです(いや、正式には、「でした」)。

職場のパソコンにはchatGTPが搭載されています。とりあえず検索すると最初に出てくるのは、AIによる内容の要約です。各設問は「正しいものはどれか」か「間違っているものはどれか」です。その選択肢の文が正しいか誤っているか・・・わたしは真面目にひとつひとつ単語検索しながら詳しい内容確認を繰り返して答を導きだしていましたが、どうしてもグレーな領域の文章もありまして、ちょっと悩むのです。「えーい、とりあえず問題文をそのまま書き写してしまえ!」とばかりにそのまま入力しかけたら、なんと、途中から勝手にそのままの文章が候補で出てきます。そしてそれを選ぶと、「はい、・・・です」とか「いいえ、違います・・・」とか、イエスかノーかで明快に答をくれました。こりゃ、ダメなんじゃないの? ほぼテストの解答集をそのまま盗み見ていることになるんじゃないの? それよりも、検索しようとしたら一言一句同じ文が選択肢に出てくるということは、わたしと同じように問題をそのまま書き写した人がいる=わたしと同じセルフトレーニングをAIにそのまま解かせた輩がいるということではありますまいか? 良いのか、そんなヤツが専門医で(まあ、わたしも同等ですけれど、どうせわたしの資格は形だけの物だからどうでもよい)?

今や、中高生でも大学生でもchatGTPを課題の解答などに使うことを許されている時代(というか、これなしでは生活できないとかいう若者だらけという)。それが当たり前の姿なのかもしれません。昭和のオヤジには到底理解できることではありませんが。

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『性分』

いつもの機関誌の秋号が発行されたようですので転載します。まったく医学的ではない内容なので申し訳ないと思いながら、それでも取り下げずに掲載してもらいました。

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『性分』

先日、通りすがりのテレビ画面に、有名すし屋の大将が鮨を握る画像が流れていました。それを見て「うわ、高そう!」と思わずつぶやく私と、「うわ、おいしそう!」と目を輝かせる妻。同じものでもこんなに見方が違います。妻の方が楽しくポジティブに生きていけるに違いないけれど、私にはマネできません。

こんなものを食べると健康に悪いし、自分の持病には一番の敵だと分かっているのに、「でも、好きだから食べちゃうのよね」と笑いながら全部ペロっと食ってしまう人と、好きだけど自分の体のためだからとじっとがまんする人。どっちが健康なのかしら。健康指導を生業にしている私ですら、この究極の選択には悩みます。がまんは健康に悪い。でもそう言い訳しながら食べてしまうことが健康に良いはずはない・・・困ったものです。ただはっきりしていることは、どっちの方が良いと分かったところで、性分は簡単には変えられないだろうということです。
うちの4歳半になる愛犬はとても臆病で、家の前を大きな車が走る音を聞くだけで怖がって二階に逃げ上がります。散歩中に突然何もいない広場に向かって激しく吠えたり遠くから来る宅配トラックを目撃した途端に踵を返したりします。「何が怖いのか、この子の予測不安は尋常じゃないよね」と私が言うと、すかさず「あなたも似たようなものよ」と妻。一週間後の天気が雨かもしれない、台風が直撃するかもしれない、寒くなるかもしれない・・・そんなことを毎日何度も言っているし、どんどん預金が減るからこのままだと一文無しになるかもしれない、咳がなかなか治らないから変な病気かもしれないなどなど、挙げれば切りがないそうです。天気なんて直前までどうなるかわからないし、お金なんて天下の回りものでしょ!とおっしゃる。咳が気になるならさっさと病院を受診しなさい!とも。はいはい、あなたのおっしゃる通りでございます。でも、これが私の性格であり性分なのです。最悪の状況を想定するから概ねのことが想像より軽く済んで「よかった、よかった」となるの。「それじゃ毎日が楽しくないでしょ」と思うかもしれないけれど、でもこれが私の心を落ち着かせる処世術。こんな性格の人は決して少なくないと思います。周りの皆さんはそこのところを理解して、あまり呆れず見捨てず批判せず、大きな心で見守ってください。

もっとも、13年前にここに『テロメア』の事を書きましたが、私のような性分はテロミアがどんどん短くなって老化が早くやってくると分かっていますから、きっと妻のような前向きな生き方が望ましいのでしょう(できませんけど)。

 

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やればできる?

やればできるんですよ、大概のことは。そりゃ、頑張れば大谷翔平になれるかと云えば少なくとも私にはできないかもしれないけれど、むかしの自分に戻ることは、物理的変化(ケガや病気)や年齢要素を除けば、たぶんやればできる。

なぜできないかといえば、やらないから。ただそれだけ。

「どうしてしなければならないのか」とか理由を考えてやらないのではない。面倒臭いからやらない。やらなけりゃ困るわけじゃないからやらない。そんなことは誰もがわかっているのです。必要になれば、やらざるをえないのならやる。「できるんなら、今やれよ」と云われても、そりゃやらないさ。やりたくないのだから。理屈で物事を動かそうと思ったらとてつもないエネルギーが要るわけで、よほどの見返りがなけりゃ、やりはしない。やればできる自信はあってもやりませんわ。

人間って、面倒くさい生きものですね。ま、野生の動物の方がもっと明確なのかもしれません。野生の動物はしなければならないことしかしないもの。道徳心で人生は送りません。生きるか死ぬかで日々を送っているのだから。人間は理屈で善悪を考えてしまう分だけしないことに罪悪感を持ってしまう、ということか。きっと私の知っている近隣の某国なんかは、野生動物に近い思考回路なのでしょうかね。

 

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睡眠の日

今日、93日は語呂合わせ(“9(ぐっ)3(すり)”)で『睡眠の日』らしい。睡眠に関する知識の普及と国民の健康増進を目的として、「睡眠の日は春(318日)と秋(93日)の年2回あり、2011年に精神・神経科学振興財団と日本睡眠学会の協力によって制定されました」とな。じゃあ、どうして春の睡眠の日が318日なのかといえば、「318日が世界睡眠医学協会が定めた「世界睡眠デー」にあたる」から。要するに、93日が語呂合わせで追加制定した日だということなわけですね。

ま、睡眠は人間の営みを円滑にする上で最上位の必須事項。質の良い睡眠を取ることが質のいい人生を送ることに繋がるわけで、睡眠を疎かにしてはいけません。『健康は睡眠で語る時代』なのです。今は次のノーベル賞候補と云われている柳沢正史教授があちこちの健康番組で引っ張りだこですが、これもまた睡眠が如何に大切かを認識し始めた証拠だと云えるでしょう。

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『<理屈>で食う』

機関誌掲載の定期コラムが今月も発行されました。さて、これが発行されると次の〆切が近づいてくる。もうあまりネタがないけどなぁ。

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<理屈>で食う

「健康番組を見て“16時間断食”を試したのですが、いつまで頑張ってもひもじい感じが取れずにイライラします。やり方が悪いのでしょうか?」・・・以前、健康講話をした後に聴講者からそんな相談を受けました。「朝食を摂らなくなってわかったこと」「夕食を半分にしてわかったこと」という内容の講演をした時にも、健康のために食事はどうあるべきか?という質問を受けたことがあります。

<食欲>は人間にとって基本となる欲求です。私は、そんな基本欲求に<理屈>を付けることが好きではありません。「~すべき」「~は食べない方が良い/食べた方が良い」・・・そんな<理屈>で食べている限り、食べた物も食べるという行為も、どちらも自分のためにならない気がするのです。もっと自分の感覚に素直になっていただきたい。私は朝食べない方が体調が良いので20年来基本的に朝食は摂りませんが、朝食を摂るべきとかべきでないとか、あまりこだわらなくても良いのではないでしょうか。朝になって、腹が減ってなければ食べなければよい。ちょっと腹が減っていれば少し食べればよい。そんな軽い気持ちで<食欲>と付き合ってみてはいかがでしょう(料理を作る人には叱られますが)。なお、冒頭の方は「1週間も頑張ったのに」と言われましたが、頑張るのだったら2~3週間は続けてほしかった。1週間は何をするにも一番きつい時・・・もう少し頑張ると意外に楽しくなっていたかもしれません。

昔、『朝食と老化』という新聞記事がありました。「朝食を摂らないと老化が進む。秒単位で進む老化を抑えるには、食べ物に含まれる抗酸化物質を摂ることが大切。朝を抜くと半日分老化するのでちゃんと朝飯は摂るべき。脳のエネルギーとして朝はブドウ糖を補わなければならない」・・・そんな<理屈>に振り回されながら食べるのって疲れないのかしら?と思いながら読んだ記憶があります。また、先日読んだ貝原益軒の『養生訓』に、「肉を1切れ食べても10切れ食べても味は変わらない。果物を1粒食べても10粒食べても同じだ。たくさん食べて胃を壊すより、少し食べて風味を楽しみ、健康でいる方が良い」「食べたものが腹に残っているのに食事をとれば消化できずに負担になる。十分に消化して食べたい気持ちが自然に起きるまで食べないことだ。こうすれば食事はすべて滋養になる」という下りがありました。書いてあることは正論だけれど、これはこれで皆さんの心が拒絶しそう。<理屈>で食うのは相当に難儀なことだと思う私は、まだまだ心得が未熟なのかもしれません。

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覚え書き

最近、内容的にはここに書くべきなのだろうけれど、休稿中なので楽天ブログ(日記帳)に書いた内容がいくつかあるから、一応リストアップだけしておこう。意味があるかどうか分からないけれど。

「8秒ジャンプ」(2025.5.21)
8秒間の軽いジャンプを数セットやるだけでダイエットだけでなく高血圧症にも効果があるという代物。ちょっと頑張ってみてるんですけどね。1週間ではまだ効果がでませんね。まあ思いの外、足の筋肉を使いますし背中が痛くなるから、何かやり方が悪いのでしょうか。

●「男性及び女性](2025.5.26)
治験の対象者表示で、「対象者は男性及び女性」って表現、日本人として違和感ないですか?という話。「性別は問わない」の表現ではなぜいけないのか理由がわからない。ま、屁理屈爺さんは嫌われる。「どうでもいいじゃないの」と担当者から陰口たたかれているに違いない。でも、私は遠い昔から日本語を話す日本人なので、許せないのです。

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『ステージA(後)』

定期コラムの掲載された機関誌が発行されたそうなので、転記しておきます。今回のは前回の続きではありますが、ちょっと敵を作りそうな過激な文章になりました。いつもゆるゆるの内容なので反感を持たれるかもしれませんが、まあ押さえておくべきことは押さえておかないと。

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『ステージA(後)』

心不全の程度を表すステージはAからDまであります。前回ここに書いたステージAはその入り口にあたる状態で、「高血圧、糖尿病、肥満など心不全に繋がるリスクがあるがまだ心臓の病気や心不全症状がない状態」と定義されています。世間一般の方が“心不全”と認識するのはステージCからでしょうが、怖いのは、今のステージがどれであれ、心不全のステージは進む方向しかないことです。心不全など全く他人事と思っている人も多いでしょうが、自覚症状がないままに進行していく病気として現代病の中では最も厄介なもののひとつに挙げられています。「健診で血圧以外は何も言われないし何の症状もないから全然無縁のもの」と思っているかもしれませんが、ステージAは単なる生活習慣病であるにもかかわらずこれが心不全の始まりでありここから進む方向しかないということは、「高血圧を甘く見てはいけない!」ということに他なりません。

私が高血圧症の治療を受け始めてから20年になります。無症状のつもりでしたが服薬を始めたら妙に頭がスッキリして、降圧のおかげなのだなと実感したものです。でもここ数年、毎朝測定する血圧は高めになり、何度か測定すると許容範囲には落ち着くものの、外来受診した時に「先生、血圧180mmHgもありますけど、これで良いんですか」と看護師さんに指摘され、さすがに気になって循環器内科で相談したのが一昨年の暮れ。24時間血圧計を装着したら睡眠中と朝夕以外はほぼずっと高値だと判明し、内服薬を大量に増やされて今に至っています。値が高くても自覚症状はなく、服用量を増やして120/80mmHg以下にコントロールしても自覚症状の変化がありません。これだけ自覚症状がなければ自ら服薬しようとも思わないし、「変わりないから勝手に止めた」という患者さんの気持ちも分からなくはありません。でも、それが如何に危険かと言うことは前回お書きしました。

「血圧は少し高めの方が健康」とか「血圧の薬は飲み始めると止められないから飲まない方がいい」とかいう都市伝説は20年以上前からいまだにまことしやかに言われています。当時の壮年が高齢者になり、そのまま長年放置した結果として今心不全が問題になっている可能性もあります。また、「もう90歳を超えた隣の婆さんは若い頃から血圧が高いけど薬も飲まずに今でも野良仕事している」とか言って、だから自分は大丈夫だと言い張る人もいますが、それは「大谷翔平にできるからオレにもできる」と言っているようなもの。彼らは私たちとは違う極めて特殊な人なのだということも心得た方がよさそうに思います。

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週30分?

体重減少には週何分くらいの有酸素運動が必要か

ダイエットではどのくらいの時間、有酸素運動をすれば痩せることができるだろうか。この疑問について、英国のインペリアル・カレッジ・ロンドンの公衆衛生学部疫学・生物統計学科のAhmad Jayedi氏らの研究グループは有酸素運動と脂肪率の指標との用量反応関係を明らかにするために文献の系統的レビューと用量反応のメタ解析を行った。その結果、週30分の有酸素運動は、成人の体重または肥満者の体重、ウエスト周囲径および体脂肪値の緩やかな減少と関連していることが明らかになった。この結果はJAMA Network Open誌2024年12月26日号に掲載された。”(Care Net 2025/02/07公開)

「週30分の有酸素運動への取り組みは、成人の過体重または肥満者における体重、ウエスト周囲径および体脂肪測定の緩やかな減少と関連していた。その一方で、臨床的に著明な減少を達成するためには、中等度以上の強度で週150分を超える有酸素運動が必要かもしれない」

この手の報告は何度も定期的になされますから、本当に『人間には運動欲という”欲”はない』というのは真理なのでしょう。つまり、「動かなくても良いのならできるだけ動きたくないけれど、動かないと支障を来すからやむを得ず動くだけだ」というのが”動物”の本音なのだと云う、何とも不思議なパラドクス。運動以外のこと(飲み食いや睡眠やストレスなど)を十分加味しているわけではないけれど、週30分の有酸素運動でも効果があるというのだから一日5分だけエクササイズすれば良いというか、週末に30分の散歩をすれば良いということ。そんな簡単なことなら、現代社会で生活している人間なら皆が皆クリアする条件なのではありませんか? でも、多くの人がダメなわけじゃん! ダイエットどころかむしろ増えていくわけでしょ。運動を始める・続ける・楽しむのきっかけ作りにはなるけれど、これだけでは結局何かが決定的に足りないのだということも判明した報告のように思えます。
 

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大腸内視鏡検査無償化

大腸がん内視鏡検査、熊本市が無償化検討 実現なら全国初 50代後半対象に25年度から

”日本人で一番多いがんである大腸がんの早期発見・治療を目的に、熊本市が2025年度から、50代後半の市民を対象に大腸内視鏡検査の無償化を検討していることが4日、分かった。大腸がんは診断されて5年後の生存率が7割超と比較的高く、早期発見・治療が死亡率の抑制につながると判断した。市によると、大腸の内視鏡検査の無償化は全国の自治体で初めて。関連経費を一般会計当初予算案に盛り込み、17日開会の市議会定例会に提出する方向で調整している。”(2025年2月5日 (水) 熊本日日新聞)

この大英断には拍手を送りましょう。さすがは、人間ドックに造詣の深い市長さんだ。たしかに大腸がんは大腸ファイバーをすれば早期発見に繋がります。健診では便潜血検査をするからそれで十分だという専門家も多いけれど、かく云うわたしは来週大腸ポリープ切除術をおけます。2年前に続いて2度目です。どちらも便潜血は陰性でした。前回は大腸CT検査、今回は大腸内視鏡検査で発見されましたが、どちらも便潜血は陰性でした。症状もなく、便潜血も正常の方が一度全大腸検査を受けると今の自分の腸の状況がわかります。今がキレイなら多分5年は大丈夫とか。さらに一度検査を受けると検査を受ける敷居が低くなります。日本の大腸検査を行う医療施設のレベルは総じて高いです。

”大西一史市長は10日の定例記者会見で「検査の効果は高い。ぜひ皆さんに受けていただきたい」と呼びかけた” 若すぎる年齢では異常がないのが当たり前だし、高齢者が頻回にこの検査を受けることは一概には薦めません。その点、『50歳代後半』というのは絶妙な対象年齢だと感心しました。

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