心と体

不規則生活と高血圧

京都大学からは、「不規則な生活で塩分を摂ると高血圧症にないやすい」ことの原因を解明した、という報告が米医学誌「ネイチャー・メディスン」(電子版)に掲載されました。

京都大学大学院薬学研究科の岡村均教授(システムバイオロジー)らの研究チームが動物実験で突き止めたもので、生体リズムを壊したマウスの副腎からは体内の塩分量を一定に保つ作用があるホルモンが過剰に出ているのだそうです。さらにその副腎の遺伝子解析をしたところ、このホルモンを作る酵素(水酸化ステロイド脱水素酵素といいます)が普通の5倍以上生じており、そんなマウスに食塩を与えると容易に高血圧になったのです。つまり、不規則な生活を送ること自体が、直接、高血圧への<準備段階>を作り上げることになるのだそうです。

・・・「岡村教授は『この酵素は人にもあり、同じ作用をする可能性が高い』と指摘した上で『不規則な生活が不健康になる一面が科学的にも証明された。現代人の教訓にしてほしい』と話している。・・・今回の話題を紹介する文章は最後にこう締めくくられていました。

ん~。高血圧症を持ちその治療を受けているわたしとしましては、そして「不規則生活」の誘惑にいつも負け続けているわたしとしましては、「高血圧になりたくないから不摂生をしない」などという殊勝な気持ちになれるかなあ。なれないだろうなあ。イエ~ィっ!

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肥満と大気汚染

アメリカ・マサチューセッツ大学から、「大気汚染が血圧に及ぼす影響は肥満者と汚染源の近くの在住者でより強い」という報告が発表されました(J.Epidermiology and Community Health, 2009)。

研究は大気汚染地域から5km以内に住んでいる人を対象にしており、参加者の半数以上が肥満で57%は腹部肥満(メタボの基準です)でした。そして68%に高血圧が存在していたわけですが、まあ「この大気汚染地域に近い人ほど血圧が高い」という事実と、「肥満者ほど血圧上昇が顕著だった」ということは容易に理解できました。

ところが、「肥満、特に腹部肥満では大気汚染の影響を受けやすく、そのために高血圧発症リスクを高める」という因果関係は初めて知ったので、ちょっと驚きました。つまり、<大気が汚いほど太りやすい>、あるいは<太っている人は大気汚染の影響を受けやすい>のどちらか(またはその両方)が云えるということになります。

何故なんでしょう?もしや、大気汚染のために生体の存続が危ぶまれる→危機脱出のためにエネルギーを貯める機序が働く→同じものを食べても蓄積する、というそういう理屈なのでしょうか?つまりは「木の枝に傷をつけると植物の発育が良くなる」というのと同じ理屈ということで良いのでしょうか?

なるほど!だから都会では妙に太っている人が多いのかぁ、って勝手に納得してしまったりして・・・違うか。

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カーボカウント

糖尿病の治療にあたって、今「カーボカウント法」が旬です。

これまで、糖尿病の食事療法はカロリー制限を基本にしてきました。<1単位=80kCal>というのは糖尿病に関連していない人でもよく知っています。ところが、急激に血糖値を上げるのは炭水化物(カーボ)なのだから、食事中に含まれる炭水化物の量だけをカウントしてコントロールしていけば血糖管理ができるという考え方がアメリカから入ってきました。

1カーボ(炭水化物の単位)が15gだとか10gだとかその考え方はいろいろあります。どの考え方でもいいので、自分が日常の中で口にする炭水化物の量がどの程度なのか、まず自分でカウントしてみてください。いずれにせよ、炭水化物の量が多いほど食後高血糖を起こしやすく動脈硬化の危険因子が増すということを考えていくと、炭水化物を摂り過ぎないことが血糖管理のためには重要だということは良く分かると思います。

具体的なカウント法については成書にゆだねるとして、ここで気になることがあります。血糖を上げるのは炭水化物であって、卵も肉も魚もあるいは脂肪も関係ない。だから炭水化物を極端に減らせばタンパク質や脂肪は無制限に食べられると思い込みがちです。低炭水化物ダイエットや低インスリンダイエットと混同している人もいます。カーボカウント法はやせるための方法ではありません。基本的には(特に日本人は)必要な炭水化物量をきちんと摂ることと脂肪やタンパク質の量はほどほどにすることが大事だと、わたしは今でも思っています。

また、以前ここでも書いたように、炭水化物の代表である「ごはん」は噛まないと食後血糖を引き上げますが、噛めば噛むほど血糖の上がり方を緩徐にするということが分かっています。このように、単純に炭水化物の量だけでなく、どうやって食べるかということでも差はつかないのでしょうか。

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魚は焼魚か煮魚がお勧め

魚にはω(オメガ)-3系(n-3系)脂肪酸が多く含まれ、これがコレステロールの質を良くしたり血液をサラサラにする効果があるので、魚をたくさん食べているとその恩恵で心筋梗塞や狭心症などになりにくいのだ、ということは周知の事実です。

先日、米国心臓協会(AHA)年次集会で発表された研究によりますと、「煮魚や焼魚は心臓への保護作用があり健康によいが、フライはそれほどでもない。体のためにはフライや干物、塩漬けは避けた方がよい」のだとか。まあたしかに一理あると感心しながら、むかしから欧米よりも魚食が多い日本人の場合は、そんなことあまり気にしなくてもフライと干物ばっかり食って「わたしはいつも魚を食べているから大丈夫」などと信じている人は多くはないだろう(最近の若い人たちの発想は奇想天外だから、意外にそれ、甘い考えかしら?)と思いました。

ω(オメガ)-3系脂肪酸の恩恵は女性より男性の方が受けるようです。女性は植物性ω(オメガ)-3系脂肪酸が含まれる大豆製品(とうふなど)を多くとって、減塩もするとより効果的という注釈がついていましたが、これこそ男女を問わず当たり前のことです。もっともこの魚食の恩恵を受けやすいのは、白人や日系アメリカ人、ヒスパニック系男性だという結果も付け加えられていました。疫学的な検討では人種が大事とは、昨日書いたばかりですが、まさしくそれを示している結果です。

生魚も検討したようなのですが、心保護作用について積極的な示唆がありませんでした。調査対象の中に、生魚を食べる人が少なかっただけかもしれません。

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わが国での知見

第68回日本癌学会で、「肥満とがんとその予防:アジアのエビデンス」というシンポジウムが行われたという記事を、先日ある医療雑誌で読みました。

いわゆる疫学研究や、あるいは生活習慣病の予防に○○は効果があるとかないとかいうこの手の研究の最大のネックは、「人種」だと思います。くだんのシンポジウムが開かれた理由も、肥満と発がんに関する研究結果が欧米からはよく報告されているが日本やアジアからはあまりない、という事実にあったのだそうで、アジア(特に日本)には欧米と同じような因果関係が云えるのか云えないのか、そこを議論し合うのが目的だった、と書かれておりました。

とても大切なことだと思います。○○はがんに効果がある、△は心筋梗塞による死亡率を高める、などなどの報告が欧米から次々に発表されるたびに、わが国のマスコミは大騒動します。ちょっと騒ぎすぎではないかといつも眉を顰(ひそ)めます。特に生活習慣病に関する疫学調査は、アメリカ人の結果が出たところで、そのまま日本に通用するとは到底思えません。体格も背景になる遺伝体質も生活習慣も全く違う国の結果は、同じ人間だというだけのことでほとんど別の星の生き物の報告でしかない、とわたしは考えています。日本あるいはアジアのデータを欧米の報告より蔑視する人が居ます。アメリカからの報告とベトナムからの報告が正反対だったら、アメリカを信用する人。でももしかしたら、それは単なる人種の差だけの問題かもしれません。ですから、日本で発表されている久山町研究(2009.9.13)NIPPON DATA(2009.9.14)などはとても貴重なデータなのです。

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ゴロゴロ兄弟

「自分の生活を見直すために、ちょっと試しにチェックをしてみてください!」

先日、うちのセンターの管理栄養士さんがそう云いながら小さなリーフレットを医局の医師の各々の机の上に置いていきました。世に名を馳せた(まさか知らない人はいないでしょうね?)「食事バランスガイド」のリーフレットですが、よく見るとなんかちょっと違います。
カッコいい中高年をサポートする>というカンムリが付いた「食事バランスガイド」のリーフレットです。農林水産省の発行物にしてはとっても場違いなイラストがあります。そのイラストの登場人物は、ちょっとだけ<ゴルゴ13>に似ている通称<ゴロゴロ兄弟>です。

兄:通称「ゴロゴロ50」
 本人はエネルギッシュなつもり、でも周囲の評価は油ギッシュ、という勘違い中間管理職。そのダメリーマンぶりに、シビアな目線が(特に腹回り)。

弟:通称「ゴロゴロ40」
 つまみ食い、つまみ飲み、暴飲暴食が癖の定食屋の亭主。常連客に言われて、自分は糖尿病かも、と心配している(でもやめられない、止まらない)。

よろしかったら、ちょっと覗いて、ちょっとチェックをしてみてください。つい最後まで読んでみたくなる、なかなか良い出来のリーフレットです。もちろん、若者向けや高齢者向けもあるようです(http://www.maff.go.jp/j/balance_guide/b_sizai/index.html)。

無意識の
食べ過ぎが生む
その脂肪

つまみ食い
常に満腹
あらメタボ

弟:「主菜」と「副菜」って違うのかよ・・・
兄:お前、それでよく調理師免許取れたな・・・

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日本禁煙学会

久しぶりに日本禁煙学会のHPにアクセスしてみました。

すぐ目に入ったのは、
「NHK『ためしてガッテン!』(2009年11月25日放映)の重大な誤りに対する訂正放送の要請(2009/12/3)」でした。

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NHKは「女性肺ガンの8割は原因不明」と放送した「ためしてガッテン!」の間違いを訂正してください。-女性肺ガン死の少なくとも4割はタバコが原因です。しかも、毎年4千人近くが家庭の受動喫煙で肺ガン死するという、あってはならない事態に警鐘を鳴らすべきです-

控えめに見ても、日本人女性の肺ガン死の18%は能動喫煙、22%は受動喫煙に原因があります。女性肺ガン死の少なくとも4割はタバコが原因です。
**************

冒頭でそう宣言したあと、その根拠を具体的なデータと一緒に書き並べていました。書いてある内容は、疑う余地もなく<蓋し正論!>だと思いますし、ただただ「偉いなあ」と思いました。

「貴重なご意見をありがとうございました。データについては考え方の相違もあるかもしれませんが、NHKとしても十分な確認と検討を行った上で放映を行いました。・・・」などと書かれた形だけの回答書が届くのは目に見えていますから、このパフォーマンスを一般市民のどの程度の人が知ることになったのだろうか?と思うととても勿体ない気がします。このHPに載っているだけということはない(ここはマニアックな人しかやってきません)のでしょうけれど、これをちゃんと雑誌や新聞などのマスコミに告知したのでなければ、ただのマスターベーションの自己満足で終わりそうでな気がして、きっと誰も知らないままの一人相撲になるのではないかと懸念するのです。それでなくても、この手の主張は、ものの見事に揉み消されます。国のやることを甘く見てはいけません。「健康のことよりも利権優先」・・・そう堂々と明言する政治家たちはまるでマフィヤかCIAのようですが、露骨に圧力をかけることを躊躇しないのがタバコの世界です。本気で戦う気なら、ピースボートのように顰蹙覚悟で戦うしかないのでしょう。・・・さびしい社会です。

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インクレチン

「インクレチン」というホルモンがあります。

腸などから出てきて、膵臓からインスリンというホルモンが出るのを強めるホルモンです。ものの本によると、ブドウ糖を口から飲んだ方が、同じ量を静脈注射するよりも2倍以上インスリンの出方が多いのだそうです。それは、腸を通った方がインスリン分泌を促すインクレチンが働くからに他なりません。

このホルモンをうまく利用した糖尿病の新しいくすりが数種類、一気に発売されることになり、臨床現場では期待が膨らんでいます。インクレチンというホルモンはインスリンがたくさん出るように働くのですが、実は血糖が高いときしか作用しないのです。ですから低血糖になる心配がありません。なんと分をわきまえた物質なのでしょう(きっと体内に存在するすべてのホルモンはもともと分をわきまえているものばかりなのでしょう)。それともうひとつ、インクレチンには、胃から食物を排出するのを遅らせて、満腹中枢を刺激し食欲を抑える作用、つまり肥満を抑える方向に向かう作用もあるというのです。肥満を伴う糖尿病の方に、糖尿病の専門医でなくても気軽に処方できる血糖改善剤が生まれてきたということになります。

この話題が載っていたページ(Nikkei Medical 2009.11)に、ベイスン(αグルコシダーゼ阻害薬)の保険適用に境界型糖尿病が加わったとことも書かれていました。画期的なことです。まだ病気ではない<予備群>の状態にクスリを使って良いということだからです。<食後高血糖>予防が如何に重要かを国が認めてくれたことになります。

糖尿病治療の様子も徐々に様変わりしつつあるようです。

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アスリートにとっての「運動」

「むかしは選手として国体にも出たことがあるのですが、今は運動を何もしていません」

こういう云い方をする元アスリートの方がたくさんいます。おかげで大きな体になってしまった人もいれば、ほとんど変わらない体型の人もいます。総じて云えることは、彼らは「運動」に対する考え方が厳しすぎます。というか、思い込んでいる「運動」の定義がきっと間違っています。彼らはヘトヘトになるまで汗だくでカラダを苛める肉体運動をして、初めて「運動をした」という実感に満足するようですが、わたしたちはそんな激しいモノを求めていません。

メタボ対策のために推奨されている「健康づくりのための運動指針2006」によると、「運動(exercise)」とは「健康増進や体力向上など意図を持って余暇時間に行うレジャー・スポーツ」と定義されています。楽しむものが「運動」ですのでもっと気軽なモノです。さらに「日常生活を営む上で必要な労働や家事に伴う身体活動」のことを「生活活動」といい、この「生活活動」と「運動」を合わせて「身体活動」ということにしています。メタボ対策では、この「身体活動」の量を一定以上増やせばいいのです。ゴロゴロしなければいいのだから、階段を昇るのも、コピー室まで歩いていくのも、あるいは背筋を伸ばしてパソコンを打つのも、どれも立派な身体活動といえます。

現代人は、実は「運動量」は特に減っていません。むしろ前より増えているそうです。ただ「生活活動」が極端に減っています。スポーツジムやプールでガンガン運動するけど、帰ってきたら後はソファに横になって一日中テレビを見ている、という人はいませんか。・・・意図的にゴロゴロしない生活をする、そのことの方が定期的に運動をすることよりもはるかに大変なことで、これは元アスリートも同じようです。

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行政の思惑

熊本市がCKD(慢性腎臓病)対策に積極的に取り組むことを宣言しました。熊本県は人工透析患者さんの数が全国トップレベルの水準(人口比全国の1.4倍)なのだそうです。

そのために、軽度のCKDから腎不全の状況に至るまで、健診などですべてを見つけだして、その全員に「かかりつけ医」を紹介させる計画を立てています。特に中等度以上のCKDの患者さんは、かかりつけ医がさらに専門医に紹介して医療連携を密に取り合おうというものです。ここでいう「かかりつけ医」とは、地域のクリニックや医院のことで、熊本市の方針に賛同して手を挙げたところがすべてリストに載ります。「かかりつけ医」がいないために、早く治療をすべきなのに放ったらかして悪化させている人が少なくないので、とにかく日頃を管理してくれる「かかりつけ医」を作ろう、という目論見です。計画はとても壮大で大変ですが、やろうとしていることは予防医学の基本ですので、モデルケースとして是非成功させてほしいと思っています。

でも、ひとつだけどうしても納得がいかないことがあります。もはや誰が診ても専門医の診察が必要だとわかる人でも、「まずは『かかりつけ医』に紹介してほしい」と頑ななのです。どうして直接専門医に紹介してはいけないのか?それは「かかりつけ医」ネットワークを確立させたいから、というそれだけのこと?。そんな行政の都合や思惑のために、直接受診したらまったく必要のない<無駄な医療費>と<無駄な受診日(仕事を休んで)>を作れ、なんて絶対云えるはずがありません。直接専門医→それから「かかりつけ医」で、何が悪いのか説明してごらんよ、とそう云いたくなります。行政が把握するのが煩雑なのでしょうか。

自分が自分自身で受診することを考えたとき、答えは簡単に出てきます。すべては市民のために!そう胸を張って云えるシステムを細かく構築してあげてほしいと思います。

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