定期コラムの掲載された機関誌が発行されたそうなので、転記しておきます。今回のは前回の続きではありますが、ちょっと敵を作りそうな過激な文章になりました。いつもゆるゆるの内容なので反感を持たれるかもしれませんが、まあ押さえておくべきことは押さえておかないと。
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『ステージA(後)』
心不全の程度を表すステージはAからDまであります。前回ここに書いたステージAはその入り口にあたる状態で、「高血圧、糖尿病、肥満など心不全に繋がるリスクがあるがまだ心臓の病気や心不全症状がない状態」と定義されています。世間一般の方が“心不全”と認識するのはステージCからでしょうが、怖いのは、今のステージがどれであれ、心不全のステージは進む方向しかないことです。心不全など全く他人事と思っている人も多いでしょうが、自覚症状がないままに進行していく病気として現代病の中では最も厄介なもののひとつに挙げられています。「健診で血圧以外は何も言われないし何の症状もないから全然無縁のもの」と思っているかもしれませんが、ステージAは単なる生活習慣病であるにもかかわらずこれが心不全の始まりでありここから進む方向しかないということは、「高血圧を甘く見てはいけない!」ということに他なりません。
私が高血圧症の治療を受け始めてから20年になります。無症状のつもりでしたが服薬を始めたら妙に頭がスッキリして、降圧のおかげなのだなと実感したものです。でもここ数年、毎朝測定する血圧は高めになり、何度か測定すると許容範囲には落ち着くものの、外来受診した時に「先生、血圧180mmHgもありますけど、これで良いんですか」と看護師さんに指摘され、さすがに気になって循環器内科で相談したのが一昨年の暮れ。24時間血圧計を装着したら睡眠中と朝夕以外はほぼずっと高値だと判明し、内服薬を大量に増やされて今に至っています。値が高くても自覚症状はなく、服用量を増やして120/80mmHg以下にコントロールしても自覚症状の変化がありません。これだけ自覚症状がなければ自ら服薬しようとも思わないし、「変わりないから勝手に止めた」という患者さんの気持ちも分からなくはありません。でも、それが如何に危険かと言うことは前回お書きしました。
「血圧は少し高めの方が健康」とか「血圧の薬は飲み始めると止められないから飲まない方がいい」とかいう都市伝説は20年以上前からいまだにまことしやかに言われています。当時の壮年が高齢者になり、そのまま長年放置した結果として今心不全が問題になっている可能性もあります。また、「もう90歳を超えた隣の婆さんは若い頃から血圧が高いけど薬も飲まずに今でも野良仕事している」とか言って、だから自分は大丈夫だと言い張る人もいますが、それは「大谷翔平にできるからオレにもできる」と言っているようなもの。彼らは私たちとは違う極めて特殊な人なのだということも心得た方がよさそうに思います。
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