心と体

アフターコロナ

大都市圏で緊急事態宣言を解除するだのまだ早いだの巷はうるさいけれど、いまだに理解できないのは、解除されたことで一般市民に何か変化はあるのですか? 行動自粛は今までと何ら変わらないはず。飲食店の時短要請が緩くなることで、今まで行き場がなくて公園に缶ビール持ち込んで大騒ぎしていた不届き者たちの収容先ができるだけのこと(本当はどっちもNGだけどな)? 後は公共施設(体育館や動物園や図書館など)で休館にされていたところが再開するくらいか。「宣言解除されたのに街はまだ閑散としています」と夕方のニュースで云ってましたが、それが当たり前なんじゃないん?

まあ、首都圏さえ終息したら地方は勝手に落ち着くでしょう(言い換えたら首都圏が終息しない限り無理)。「そもそも、新型コロナをいまだに指定伝染病扱いにしているからこんなパニックになっているのだ」と批判する専門家も最初から多いし、「冬場に大流行したのは去年までのインフルと同等だ、いちいち騒ぐな」というのも理解できているのですが、それでも今は世界的に騒動が落ち着くまで現実的には変えようがないでしょう。「ワクチンは本当に救世主になれるのか?」・・・初めての経験だからそれすら誰も答を知らない。

そんな中で、最近ふと思います。今やマスクは生活必需品で付けていないと不安でしようがないくらいの状態。もし、インフルと同じようにワクチンに効果があることがわかり、治療薬も生まれそうだという状態になったとしたら、すぐに人混みの中でマスクを外す勇気が生じるだろうか? そもそもマスクなしで街中に出かける勇気(その前に人混みを見てたじろがない自信)ができるだろうか。ホテルに一泊するとか、まずは出張で飛行機に乗って東京に出かけるとか、そんなことが躊躇なくできるようになるまでにどれくらいかかるのだろうか。街中で大宴会するなんてもっともっと先。「明日から、何しても良いですよ!」と専門家が宣言したとしても、その第一歩を踏み出す勇気は、わたし的にはかなり高いハードルです。

あ、いや、きっと何も起きないことなんか容易に想像できるのです。今すぐやってもこんな地方都市ではきっと大丈夫なんだと分かっているんですけど・・・。

 

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アルコール性肝障害

人間ドックや健診で肝機能とか腹部超音波検査とかに対して『要精密検査』や『要治療』の評価を受ける人が昔からたくさんいます。まあ、多くの場合は脂肪肝とか、飲み食いのしすぎとか、ほぼ生活習慣の乱れの現れなのだと推測され、原因究明の検査や薬物治療を求めて紹介状を出すのではなく、生活の見直しをしながら定期チェックを受けるためのかかりつけ医を作るための紹介状であることがほとんどです。だから、どうせ紹介状を出しても「経過観察」の返事が返ってくるだけなのだからと、わたしは結果説明をする時点で判定を下げてあげることが多いです。

で、そういう紹介状を出すと決まって医療機関からの返事には『アルコール性脂肪肝』とか『アルコール性肝障害』とかいう診断が書かれています。「ちょっと飲酒習慣があるだけで、面倒くさいモノだから医者はすぐに”アルコール性”とか書くんだ・・・ほとんどは飲み過ぎというより食い過ぎが原因でしょ!」と悪態をつくわたし。「”アルコール性”と診断するのは、かなり長い間続く大量飲酒習慣(アル中)の人の話なんだよ!」と思いながら、この機会にちょっと調べていました。

”アルコール性肝障害(ALD)とは:長期(通常は 5 年以上)にわたる過剰の飲酒が原因と考えられる肝障害で、以下の①~③の条件を満たすものとします。
①過剰の飲酒とは、1 日平均純エタノール 60g 以上の飲酒(常習飲酒家)を云う。ただし、女性や ALDH2 欠損者では、1 日 40g 程度の飲酒でも、ALD を起こしうる。エタノール 60g とは:ビール[アルコール 5%]大ビン 2 本弱、日本酒 2 合、焼酎[アルコール 20 度]2 合弱、ワイン[720ml]1/2 本、ウィスキー(アルコール 40%)150ml に相当します。
②禁酒により、血清 AST(GOT)、ALT(GPT)およびγ-GTP 値が明らかに改善する。
③肝炎ウィルス(B,C 型)マーカー、自己免疫性肝炎の抗体(抗ミトコンドリア抗体、抗核抗体)がいずれも陰性である。”

ほーらみろ、こんなに飲まなきゃ認めてもらえないんだから・・・。ん? ビール(大)2本弱・・・これは1200mlくらい? そんなに毎日飲めんわ。と思ったけれど、日本酒や焼酎は2合程度? こっちは意外に飲むかもしれない。しかも晩酌と云ったら普通、「さしより(「とりあえず」の意味の熊本弁)ビール、その次に焼酎お湯割り」とかいうパターンが多いじゃない? ということは意外に基準は低いんじゃないのかしら。こりゃ、わたしもちょっと検査値が悪かったらヘタすると「アルコール性肝障害です」とか診断されるかもしれないということじゃないですか。くわばらくわばら。

もっとも、②の条件があります。まずは禁酒してみないといけません(ちょっとだけ減らすのではダメ)。禁酒したら正常値に戻って、もう一度飲んでみたらまた上昇するなら『アルコール性肝障害』という診断になるのですから、ここまできちんと検査・指導してもらいたいものです。γーGTP高値の方にはいつも説明していますが、「この場合、『診断がつく』というより『あなたにはお酒の処理応力がありません』と自分のカラダから引導を渡されたようなモノ」ですから、観念せねばなりますまい。

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気付きたくないけれど。

「あなた、最近、お酒飲むとすぐクシャミするようになったね。お酒が合わなくなったんじゃないの?」

妻が云う。しまった、気付かれたか。実はクシャミだけではない。鼻詰まりもするようになってきた。まるで、花粉症と同じではないか。酒の中ではビールのときが一番明確なようである。その次が日本酒。飲むのを終えるとほどなく症状は消える。

できるだけ気付かないふりしてたのだけど、これからどっちに動くのかなぁ。どんどん拒絶反応が強くなるか、それとも今を底にしてこれから克服して持ち直してくるか。どうも前者のような気がしてならない。

それを考えると、今のうちにいっぱい飲んでおいた方がいいのかなとか姑息なことを考える。と、ところがである。最近、ビール350ml缶の2缶めに入ったら急に眠気がやってきて、飲み終わった頃にはほとんど酔っ払いで目が開けておれないほどに眠くなるようになってしまったのです。そんなこと、よほど疲れていたり睡眠不足だったりしない限り、1年前までのわたしでは考えられなかったことだ。たぶん、今でも、外での宴会とかならもっと飲めるのかもしれないけれど(コロナ禍でそんな機会は皆無になりました)・・・。家では、呑めなくなったなあ、と痛感。なのに、「そんなはずはない」とばかりにお替わりしてみたり焼酎や日本酒を加えてみたりして、何度撃沈したことか・・・。

かつて、「自分のは長生き志向なんかこれっぽっちもないから」と云って誰に注意されても意地でもタバコをやめなかったのに、突然カラダが受け付けなくなって(もらいタバコしたレベルでも、翌朝の吐き気やシャックリが激しくなるし、ちっとも美味しいと感じられなくなって)やめざるを得なくなったことを想起させる。酒飲むと、カラダが「No!」と云い始めるって、考えただけでも、恐ろしいわ。

時とともにアレルギーがひどくなって、今まで食べられていた大好きな食べ物がどんどん食べられなくなって、間違って食べた後に激しい下痢でトイレに何度も駆け込む妻の姿を見ていると、『自分のカラダが何かを拒絶するようになる』って気が遠くなるほど大変なことなんだな、と痛感しています。

PS)こんなことをヌケヌケと書きながら、実はちょっと検索してみたらすでに3年半前には気付いていた(汗):『晩酌をやめるとき?』・・・まあこの頃より明らかにキャパが落ちているのは確か。

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「検診医しかできない医師」だと?

医師用の配信記事の題名に『一生検診しか勤務できない医者増殖中』を見つけて、カチンときました。頭にきてサラッと読んでみたら、「専門医資格を持っていないので・・・」とか「前職が検診だと訪問診療にも転職できない」とかそんな内容。

「健診なんて(そもそも「検診」と「健診」の違いすら知らない医者に何がわかる?と思いますけど)誰でもできる」と思っている臨床医がいまだに多すぎるし、わたしが健診部門に希望して移動したときには、「先生、今まで忙しすぎましたもんね。少し息抜きするのも大切ですよ」と事務スタッフから云われたこともあります。

わたしが臨床医に見切りをつけて予防医療の世界に移った理由は以前何度かここにも書きました。健診専門医になった頃(正式に専門医資格と指導医資格を取得したのは遙かあとですが)には明らかに格下に見ている連中に「何にも知らないくせにバカにしやがって!」と反発したものです。でも、病院の幹部クラスの部長医師が結果説明の手助けに来てくれる様になった時期に、ものすごく受診者に不評で「何も説明してくれなかった」「ほとんど問題ありません」とか云って何も具体的なアドバイスもしてくれなかったとか大多数がアンケートに書くものだから、数ヶ月で部長医師の手助けシステムが中止になったときに、「それみたことか」とほくそ笑んだことを覚えています。

健診の医師の最大の仕事は健診結果の意味を説明することなんかじゃない。異常者を病院に受診させることでもない。その結果を元にその人の人生に対して何をしたら病気にならずに楽しい健康的な生活を送れるかのアドバイスをすることなんです。言葉は悪いけど、そこいらの単なる優秀な修繕屋には絶対にできない仕事なんです。まともな健診をこなせる医者なんてそんなにいません。昔の「でもしか先生」みたいな云い方、しないでもらいたいものだわ。

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ビタミンA

妻が買ってきた目薬を差したら、なんかすこぶる調子が良い。先日ここにも書きましたが、最近の視力の低下は著しく、コンタクトレンズ装着時に老眼鏡をかけても小さな文字が読みづらくなって、「いよいよ老眼鏡の度を上げないといけないのか?」と凹んでいました。夜の真っ暗な車中でスマホに届いたメッセージを読もうとしてもまったく読解できなくなかった・・・「歳取るって寂しいことなんだな~」と諦めていました。右目の白内障が進んだので点眼薬をもらったけどさほど見え方に変化が出るわけでもなく、使い終わった後もそのまま受診をしていません。

そんな折、妻が薬局で市販の目薬を買ってきたのです。数多ある薬の中から『年齢・酷使による眼精疲労。かすみを治す。』『繰り返す疲れ目の視覚機能回復サポート成分配合』と銘打ったモノを選んできました。『吸着性ビタミンA最大量配合』と。こういう手の目薬、全然信用してなかったのですが、使ってみたら途端に見えるようになって驚きました。職場のモニターを使って行う画像読影の業務もここ半年老眼鏡が欠かせなかったのに、目薬を差した翌日からは老眼鏡そのものが要らなくなって・・・こんなに変わるモノなの?と驚くことしきり。文字を読むのがつらいから全く本を読まなくなったけれど、これならストレスなく読めます。

あまりにも極端なのでちょっと怖いのだけれど、この張本人はやはり『ビタミンA』の作用なのだろうと推測できます。学生の頃、「ビタミンA不足は夜盲症」と教わった記憶があります。わたしのこれまでの人生で偏食などないからビタミン不足なんて考えていませんでしたが、たしかに今の自分の症状はビタミンA不足(暗いところでモノが見えなくなったことなど典型的)だと考えて矛盾しない。とりあえず、今の急激な視覚機能の低下は単なる調節障害や白内障ではなく、角膜細胞の機能障害がメインなのだろうと推測して、毎日目薬を差すように心がけています。

でも、こんな姑息な方法、いつまでも続けて大丈夫なのかしら? 目薬だから過剰摂取になる危険性は少ないだろうけれど、常用したために取り返しがつかない副作用とかないのだろうか。サプリを飲む気にはならないし、食事で摂るといっても毎日ウナギやレバー食えないしバター摂るためにパン食にする気もないのだけど・・・。

 

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降圧剤と新型コロナの関係

主要降圧薬で新型コロナ感染リスクは上昇しない

 ”高血圧の治療に広く使われているアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬とアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への罹患リスクや合併症リスクを高めないことが、大規模国際研究で示された。米カリフォルニア大学教授のMarc Suchard氏らが実施したこの研究の詳細は、「The Lancet Digital Health」に2020年12月17日掲載された”

HealthDay Newsから転載されたCareMetの配信記事です。実は恥ずかしながら、1年前にCOVID-19が流行し始めたころ、「持病に高血圧症のある患者は感染が重症化しやすい」というのは知っていましたが、「治療薬として服用しているACE阻害薬とARBが悪化させる原因になっている」という話がマスコミを通じて話題になったことなど知りませんでした。たしかに、今になって検索してみると、すでに去年の4月の段階でその説を否定するコメントなどが出されていました(「【新型コロナウイルス】降圧薬の服用でCOVID-19は重症化しない 欧州と米国の高血圧学会が声明を発表」)。それを今回大規模国際研究を行って実証したということでしょうか。

「喫煙者は非喫煙者より返って重症化しにくい」という話を大義名分にして「コロナで死にたくないから今は禁煙しないでできるだけタバコを吸うようにしてる」なんてことを涼しい顔して云っていた知人がおりましたし、スタチン系薬剤は認知症を起こすらしいから飲みたくないと云って動脈硬化バリバリの人が薬剤を勝手に中止したり、その都度患者さんの管理をしている医者側はヤキモキします。根本的に本末転倒な話ですが、薬剤はそもそも異物であり毒物ですから大なり小なり身体に負の影響は与えるはずで、それを踏まえてもメリットの方が多いから服用を勧めているのだということを理解はしておくべきでしょう。

もっとも、今回のコロナ禍の様に今まで経験したことのない敵が現れたときには、今回のような実証研究をしない限り真実は分からないとも云えます。だから、改めめACEやARBの関与が否定されたことは重要なことなのだと思います。ちなみに、わたしはアムロジピン(カルシウム拮抗剤)を服用中なのですが、これは問題ないのでしょうかね?

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間食、早食い、寝る前の食事

肥満リスクを相加的に高める3つの食習慣

 ”間食、早食い、就寝間近の食事という3つの習慣のうち、あてはまる数が多い人ほど肥満や腹部肥満の人が多いという。久山町研究のデータを、九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生学分野の吉田大悟氏らが解析した結果であり、詳細は「Nutrients」に10月16日掲載された”

CareNet2020/12/29号で配信されたHealthDay Newsの記事です。

さもありなんの内容で、「云われなくても分かっとるわい」と云いたくなる内容でも、きちんとデータ化して該当者に突きつけるのは重要な行動変容のための方法ではあります。

久山町研究のデータを用いて、「間食をするか」、「他人よりも食べるのが速いか」、「就寝前2時間以内に食事をするか」という3つの食習慣について解析(2014年に住民健診を受診した40~74歳の福岡県久山町の地域住民1,906人(男性43.8%)について)した結果、どんな肥満に関連する因子で調整しても、この3つの食習慣に該当する数が多いほど肥満・腹部肥満の頻度が有意に高いという結果です。特に、『若年者、男性、就業者』にその傾向が顕著・・・夜遅くまで働いて帰ってきてから爆食いしてさっさと寝る、あるいは昼間はゆっくり食う時間がないから短い時間でバタバタ食うか空き時間に空腹に任せてお菓子を食う・・・「こんな仕事をしている間はしょうがないでしょ」と言い訳しながら、それでも若いから太っていてもさほど切実な問題だとは思わない。こんな連中に、たとえこんなデータを健診や特定保健指導で並べられても素直に生活を改めるとは思えないのです。何か良い方法はないかしら。

今は、超ビッグサイズのかっこいい服が多すぎるから大きくなっても気にならないのかしら。しかも、太っていてもさほど異性から毛嫌いされないし・・・思い起こせば、わたしがまだ超肥満時だった小学校低学年から高校卒業までのころ、巷にはわたしが着れる服はほんの少ししかなかった。中学生なのに、どこぞのじいさんが穿くような地味なでっかいズボンしかなく、LLサイズ自体が数が少なくてデザインや色よりもまずは「入る服はどれ?」というところから服選びが始まる・・・そんなこと今はないものなぁ。今は超でっかい服でも返ってオシャレだったりするし・・・ここが最大の問題かもしれないかも?(笑)

全く横道に逸れた結論になって、ごめんなさい。

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結果説明のモットー(番外)

実際のインタビューを新婚の管理栄養士さんから受けながら、ふと思い出したことがあったので、追加で書いてみます。

説明に影響を与える要素として思いの外大きなものに”年齢”があります。受診者(患者)さんの”年齢”ではなく、説明をする私たちの”年齢”です。”経験”というよりは”年齢”です。

例えば、食後高血糖を起こさないようにするための食べ方のアドバイスとして「よく噛む」というのがあります。健診に関わる保健師さんたちの常套句は『1度に30回以上噛む』ですが、わたしはそんな言葉は使いません。「保健師さんは健診結果に改善効果があるから」と自信もってますけど、「あんたら自分でやってみたことあるんか?」と云いたくなる。30回なんか数えていたら食べているもの自体の味が分らなくなるから、絶対あんたらは続けられないよ!と。あ、ちょっと横道に逸れました。こういう時にわたしは、「飲み込みかけてまだ噛めると思ったら一度戻してでも噛んでください。そのうちに噛まずにはおれなくなって気付けば今まで気付かなかった味に驚くでしょう」とアドバイスするのですが、相手が高齢だと「どうせもう”残された人生は短い”のだから、もっと噛んでおかないと勿体ないぞ、と思って噛んでください」とか平気で云います。こんな失礼な言葉、わたしの歳だからこそ相手も笑ってくれますが、これを今回インタビューしてくれた栄養士のお嬢さんが云ったら、「小娘のくせに失礼なヤツだ!」と反感を買う可能性が高いでしょう。

遠い昔、わたしがまだ循環器内科で毎晩のように緊急カテーテル治療を行っていた頃、忘れられない出来事がありました。真夜中に急性心筋梗塞で救急搬送されてきた男性にすぐにでも再疎通療法を行うべく、一緒についてきた奥さんに病状とできるだけ早くに治療をする必要があることを説明して治療の承諾書にサインをもらおうとしたのですが、奥さんが「朝になってかかりつけ医に相談してから決める」と頑として首を縦に振らず、治療にとりかかれないままゴールデンタイム(再疎通療法の効果が期待できるのは発症から3時間、せめて6時間以内だと云われていました)が過ぎようとしていました。いつも早朝出勤してきた当時の部長が説得に当たり、やっとゴーサインが出たのですが、あとで部長がわたしに云ったのは、「気を落としなすな。君の説明の仕方が悪かったわけじゃない。奥さんの云うには、『あんな若造が、初対面なのに”今治療しないと死ぬ”とか無責任なことを上から目線でまくし立てて脅すから怖くなった』のだそうだよ。インテリジェンスの高い仕事(学校の先生)しているのに、どうして今置かれている状況が分らないのかねえ」と。あの時にはピンとこなかったけれど、今の歳になってみると何となく分ります。今突然わたしの前に若い営業マンが現れて、わたしにどんな意見や提言をしたとしても、わたしは「とりあえず、ノー」と答えるでしょう。

説明を受ける場合にたまたま自分を担当する説明者が”年季”が入っている人かどうかというのは、受ける側の立場に立てばとても大きな要素なんだと思います。もちろん、歳を取っていれば良いというモノでもありません。「このジイさん、偉そうに知ったような口きいているけど、本当は何も分ってないんじゃないの?」と感じさせる人も少なくありませんからね。

 

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結果説明のモットー(3)

(つづき)

インタビュー用に準備された質問への答を総括してまとめてみるとこうなります。

●患者さんやご家族が先生の説明に求めているものは何だと考えますか?
→自分の今の健康度はどうなのか?このままでいいのか?何か新たにするとしたら何をしたらいいのか?そんなことに対する具体的な評価とアドバイス。「自分は健康か?」という命題に対する明快な解答。

●説明の内容を理解していただくために配慮していることは何ですか?
→心の鍵を開ける。短時間で心を開いてくれるように説明の順序や口調に注意する。本人が気にして構えていることに対して肩すかしを食らわす。

●先生の決め台詞は何ですか?
→健診結果を良くするために生きているのではない。楽しくなければ人生の無駄遣い。おいしく食べなければ食べる意味がない。諦めたときから歳をとる。女性としてのプライドを持って。アラ●●の戦いはアンチエイジングの戦い。など多数。

●先生の考える納得のいく説明とはどのようなものですか?
→自分が今から何かをしたくなる気持ちにさせること。そして、具体的に何をしたいと思わせてくれること。何が悪いかではなくて何をしたら良くなるかを理論的に教えてくれる説明。それでもできない人間の気持ちを理解して寄り添ってくれる説明。

●思い出に残っている場面
→先生の説明は、ものすごくわかりにくいですね。と言われたこと。
→相手が憮然とした態度なので私も不機嫌に話していたら「その態度は何だ!」と激高されたこと。

●説明がむずかしいと感じたときどう対処する
→明らかに聞き流しているなと思うときにはあえて深追いはしない。ムキにならなければならないほどわたしにこの人を変えさせる義務はないのだから。ただ、今まで説明した先生方が多分使っていないであろうワードはいくつも投げ込んでおきます。聞き流しているようで意外に聞いているから、後で何となく心に引っかかるようにしておく。それで十分です。 

●説明に関して昔と今との違いを感じることはありますか?
→健康に対する意識が高くなっているので返ってやりやすい。たとえば便潜血。昔は、やれ便が硬かったからとか痔があるからとかどうもないからとか理由付けして精査を拒む人が多かったけれど、最近は「そうですね、怖いから受けてみます」と若い女性でも積極的に受けようとしてくれる。

 

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結果説明のモットー(2)

(つづき)

わたしたちの仕事は、毎年ご指名いただく常連さんやたまたま何度も担当になって顔を知っている方を除けば、基本的に初対面の人を相手にします。なのに、高々10分か15分で話が完結するのです。だから、会ってすぐに心を開いてもらわなければなりません。わたしたちの施設では、説明の順番を待つ間、結果表のコピーを渡して前もって見ておいてもらうようにしています。そうすると、名前を呼んだときにきわめて神妙な顔つきで入ってくる人がたくさんいます。明らかに構えて入ってきます。自分のデータから何を云われるか、毎年のことだからほぼ想像がついているのです。聞く耳を持たないか、とにかく聞き流そうと準備している様子が顔の表情にありありと表れています。この人たちの心を開くのは意外に大変です。でも意外に簡単です。こうやって診察室に構えて入ってこられる方には、まず最初に全く関係ない項目から説明を始めることにしています。胸部CT検査や胃内視鏡検査、あるいは腹部エコーなど画像診断の画像から入るようにしているのですが、順番に画像を眺めながら説明をしていると、少なくともわたしがどんな感じの人間であるかは感じ取ってもらえます。そして、心の準備をしている生活習慣の悪さを非難する人間ではなさそうだということも感じてもらえるとしめたものです。もちろんCTでは内臓脂肪の多さを、腹部エコーでは脂肪肝のなんたるかをそっとインプットさせます。ここで少しでもコトバのやりとりができればおそらく受診者の多くは少しだけ心を開いてくれています。そうすると、その後インスリン初期分泌不全の何たるか、何をしたら良くなりそうか、具体的に何をしようか・・・そんな建設的な会話をすることができて、診察室を出ていく頃には温和な顔に変わってくれているのです。

「こんなに詳しい話をしてもらったのは初めてです。本当にわかりやすく説明してもらってありがとうございました」・・・こういうコトバをよくもらいます。でも実は何も特殊なことは話していません。同僚や上長が試しにわたしの説明を聞いても「全然普通じゃないか」と拍子抜けされます。そうなんです、別に他の人より長く話しているわけでもない(むしろわたしが一番説明時間が短いらしい)し、説明する項目を省略しているわけでもない(原則としてすべての項目を説明しています)のです。それでもこんな感想をしていただけるのは、おそらく、相手が心を開いてくれたからだと思っています。短時間で相手の心を開いてもらう唯一の方法は、会ったら可及的速やかにわたしの心を開いてしまうこと、あまり意識したことはないけれど、きっとそういうことなんじゃないかなと思っています。しかめ面で憮然とした表情で部屋に入ってきた人が10分後にはニコニコして出て行きながら「ちょっと頑張ってみます」と云ってくれたときが一番うれしいです。

まあ、行動変容の難しさは、そんな顔して出て行っても大部分は何も変わらないということなのですが。 (つづく)

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