心と体

禁煙何年で喫煙歴ゼロと同じ?

日本の喫煙者のがんリスク、禁煙何年で喫煙歴ゼロと同じに?

日本人のがん罹患リスクは、男性で21年以上、女性で11年以上禁煙すれば、喫煙歴のない人と同レベルまで低下することが、東京大学の齋藤 英子氏らによる研究で明らかになった。男性では、20 pack-year以上のヘビースモーカーにおいても同様の結果であるという。早いうちに禁煙することが、がん予防への近道であると考えられる。Cancer epidemiology誌オンライン版2017年11月2日号の報告

CreNetに紹介されていた記事を読む。本数は検討されているけれど禁煙開始までの喫煙年数は書かれていません。ただ、これをどう読み解くのか? 「影響をゼロにするにはそんなに多くの年数を要するのか」と落胆し、「じゃあ、今さらやめても大差ないかな」と云い訳の方に持って行くのか、「そんなに大変ならさっさと止めちゃえ」と持って行くのか。あるいは、「どんだけ吸っていても吸ってないときと同じレベルまでになれるんだ」ということに感動するのか。

これは・・・非喫煙者は禁煙指導に利用できると思うかもしれないけれど、喫煙者は諦め理論の根拠に利用するのが必然でしょう。かといって、もしも逆に5年くらいでご破算にできるなんて結果が出たら、やめる人が増えるどころか、逆に「いつでもやめられるわ」派が増えるだけでしょう。

いつかはやめようと本気で考えている誰かがこれをみて、実行のきっかけになってくれるといいですね。ちなみにわたしの齢で禁煙に踏み切ると、がん罹患リスクが普通と同じになるのが80歳・・・そこまで生きてないだろうなあ(笑)

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低体温

「体温が35度くらいしかないんです。どうやったら、体温を上げられますか?」

先日、健康相談に来た70代の女性の相談はそんな内容でした。

「何か体調でもわるいんですか?」
「いいえ、とても元気です」
「なのに、今の体温が不満ですか?」

そう聞いたら、「こないだテレビでやってたでしょ。『体温が低いと免疫力が落ちてがんになりやすい』って。体温が1度下がるだけで免疫力が〇%落ちるって云ってたのを聞いて怖くなって。テレビでいっていたとおりに運動したり生姜を食べたりしたけど、体温が上がらないんです。あと、どんなことしたら体温が上がりますか?」と切々と語られました。

困ったもんです。テレビの健康番組で云っている理屈は正しい。でも、こうやって必要もなく悩む人がたくさん出てきているであろうことをもうちょっと配慮して番組を作ってほしいです。ターゲットになっている主体は最近の若者でしょう。空調管理や食事のバランスの悪さ、あるいは運動不足などで自律神経がちゃんと働けなくなっている若者たちの平温は、たしかに低いと思います。彼らはもう少し代謝を上げてやらないとがんだけでなく簡単に感染症になったりしますから、代謝を上げるための生活の注意はしっかりすべきでしょう。高齢者もまた動くのが億劫になって家に引きこもり、筋肉が落ちてきてロコモやサルコペニアの問題に派生する可能性もありますから、代謝を上げる努力はするに越したことはありません。

ただ、日頃からそんなこと普通にやっている人たち(こんな人たちの方がかえって健康に気を配るのでこういう番組を見るのでしょうが)がさらに気をつけても上がらない体温は、上がらなくて正解なのだと思います。このカラダにはこの体温でいいとカラダが判断しているから上がらないのに、「がんばっても体温が上がらないので自分はがんになりやすいのではないか」と悲観させてしまうなんて、なんか悲しい限りです。

みなさん、くれぐれも、『健康』に押し潰されません様に。

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腎結石とがん死亡

再発腎結石はESRD、死亡の高リスク

腎結石は末期腎疾患(ESRD)および心血管イベントのリスクの増加と関係する』と云われており、『初発ではなく再発の症候性腎結石患者は末期腎疾患および死亡のリスクが高いこと』などをアメリカMayo ClinicのTsering Dhondup氏らが報告した、という記事もMedical tribuneで紹介されていました。

つい数日前にも結石が排石されたばかりのわたし。高校卒業後から尿管結石は何度も経験し、一晩に左右から落ちたこともあれば、年に3回も4回も排石された経験もあります。となると、わたしは、『再発の症候性腎結石は、より高い死亡率、特にがん死亡率と関係する』というやつに当てはまるわけで、腎臓がんと尿路のがんに注意が必要だということなのでしょうか。たしかに若い頃に生命保険に入ろうとしたらに、「尿管結石の既往がある」というだけで、がん保険には入れなくて、「何の関係があるんだよ」とアタマに来たことがありました。あれは、決して的外れではなかったということでしょうか。

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慢性腎臓病と身体能力

Medical Tribuneの配信記事にCKD(慢性腎臓病)の指標であるeGFR(推算糸球体濾過量)と身体機能についての記事が2つまとめて出ていました。

CKD患者の身体機能に歩幅が関連

eGFR低下は身体機能を左右しない

基本的に欧米人のデータなのであまり深くは読む気にはなれないのですが、CKD患者の運動障害や身体機能障害が合併症や死亡の要因となるため、『身体機能低下の予測因子は高リスク症例の早期発見を促す可能性』があるというのは周知の事実。そして、その予測因子に歩行速度だけでなく歩幅も重要である(『歩幅が狭いことが身体機能の低下や転倒のしやすさと関連する』)という報告をしたのがアメリカAlbert Einstein College of MedicineのMatthew K. Abramowitz氏らです。「で、だから何?」と突っこむのがわたしの趣味。要するに、「CKD患者さんはできるだけ意識して歩幅を広くさせながら早足で歩くように指導しなさい」ってことなの?

何か違うんじゃないの?と思ったところでもうひとつのアイルランドからのコホート研究の報告(Trinity College DublinのMark Canney氏ら)です。『高齢者ではeGFRが低値であるほど身体機能検査の成績が悪い』ことは分かっているが、これは腎機能が下がるから身体機能が低下するのか?という検討。背景因子で補正したらeGFRの程度が高くても低くてもリスクに差はなかったという結果が出たそうで、要するに「この相関関係は結果であって原因ではない」ということがわかったということなのだと思います。ま、そらそうでしょうね。「だから何?」という点では同じですかね。

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LDLと感染症

出た出た。「超善玉ホルモン(長生きホルモン)ことアディポネクチンが多いと骨粗鬆症になりやすい」と云うデータに続いて、今度は「LDLコレステロールが多いと感染症になりにくい」と云う報告。

LDL-Cは血液透析患者の感染症リスクを低減

これは血液透析患者に限った検討ではありますが、『LDL-Cは細菌性毒素の吸収および不活化に働いて、先天免疫に関与している可能性が考えられている』という理論は普遍的な内容なのでしょうから、生命予後には有意な関連はないにしても、一般人でも「LDLコレステロールを減らすと感染症になりやすい」可能性はあるのではなかろうか。

『血液透析患者における動脈硬化性疾患ではLDL-Cよりも炎症の関与がより大きく、炎症そのものや細菌性毒素などが炎症を起こすプロセスの抑制がより重要な可能性がある』というコメントは重要な示唆だと思います。

というか、やっぱり生き物のカラダに存在するすべてのものには大事な役割があって、「少なければ少ないほどいい」なんてものは存在しない(そんなものがあるなら最初から消えてなくなるはず)し、「多ければ多いほどいい」というものも存在しない(そんなものがあるなら最初から増量し続けるようにプログラムされるはず)という当たり前の摂理を、世の中のすべての者があらためて認識すべきであるということを示していると感じています。

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達観した子ども

Infants make more attempts to achieve a goal when they see adults persist.
(大人が粘り強いのを見ると幼児は目標を達成しようとする試みを多くする)

毎月、日本ポジティブサイコロジー医学会の会員宛に配信されてくるメルマガの10月号の中にこういう論文が紹介されていました。Science 2017,357に掲載されたもので、生後15か月の幼児に対して、大人がいろいろ試行錯誤しながら目標達成のために粘り強く努力している姿を見せると、大人が楽に目標達成できている姿を見せる場合に比べて、その後自分に課せられた新しい課題を克服しようと試行錯誤する態度が強くなることが分かったそうです。紹介と解説をしている京都大学の高橋英彦准教授によると、子どものうちから周囲の大人(特に親)が目標に向かって努力を重ねている姿を見て育つと、努力することの普遍的価値を見出して、新たな課題に直面した時に粘り強く試行錯誤を繰り返す姿勢が強まることを示しているとのこと。

そんなサマリーを読みながら、すぐに違うことを考えてしまうわたし。「人生、努力するココロを持って貪欲に頑張ることが大事なんだぞ」ということを、幼少の頃から身に付けていることが、人間のココロの成長を促し、将来の成功につながるのだということに納得する一方で、物心ついた頃から、邪念を持つことなく一切の欲も抱かずあるがままにすべてを受け入れる聖人のような生き方をする親の姿を観て育った子の価値観はどうなのかしら? 仏陀やキリスト以上のカリスマが育ったりしないのだろうかと、今のわたしはそっちの方がはるかに興味があります。

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健康講話

毎年恒例のイベントとして引き受けて来ていた2つの講演を今年度はお断りしました。1つは某企業の退職前の職員に退職後のライフプランを立てさせる研修会の中での健康講話。もう1つはこれから健診や特定健診に携わる保健師さんたちに対する講義です。昨年も一昨年も辞退の意思表示をしていたのになんやかやと押し切られてしまったから、昨年度の講演の最後に、「もう本当にこれで最後ですから」と断言してやっと実現しました。

断わった理由について、公式には「5年以上続けると内容がマンネリ化して新鮮味がなくなるから」「わたしの話はハッタリ主体なので、もっと若くて詳しい人に替わった方がいい」ということにしています。「どうせ新しい講師を探すのが大変だから惰性で依頼しているのでしょ!」と皮肉を加えて。でも、本当の理由は違います。

ライフプランの方は、いつのまにか対象者が皆わたしより年下になりました。自分が対象年齢より年上になった以上、これから健康を維持するためにどういうことに注意したらいいかという自分の話す理論について、自分が体現させていなければ示しがつかないではありませんか。「で、先生はしているんですか」と聞かれた時に、できてないと全然説得力がないですからね。保健師さんたちへの講義も同じ。自分のできてないことを話すと単なる机上の空論になりかねません。「おまえは、自分ができもしないことを人にさせようとしているのか?」と疑われそうですが、わたしは自分のできないことは話しません。自分のできることを話します。だから、話す内容が徐々に教科書的な理論とは離れていきつつあるのであります。

生活変容の専門的な話は、全く他人事の立場の人が話す方がグイグイ引っ張っていけるものです。

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健康長寿

特別にやりたいこともないのに、健康長寿を目指す意味なんかあるのだろうか?という疑問が、ずっとわたしのアタマから離れません。

「何のタメに節制するの?」

「やりたいことをやって、健康で長生きするためよ」

「やりたいことがないのに?」

「やりたいことを探せばいい」

「長生きするためにやりたいことを探すの?」

こんなことをすると寿命が何年短くなるとか、あんなことをしていると死亡率が何十パーセント高くなるとか、逆にこういうものを食べると長生きできるとか、そんな健康に関するデータが毎日のように発表されています。「早死にするよりは元気で長生きな方が良いに決まっているでしょ!」と云われるけれど、ホントにそうなのか。「死ぬのは怖い。だからできたら死ぬことを考えたくない」・・・というのは理解できるけれど、無理して長生きすることの意義がよく分からなくなっている今日この頃であります。

まあ、神様に生かしてもらっている身としては、「つまらないことを考えずに、今という時間を一生懸命に生きなさい」と叱られそうなので、この辺にしておきましょか。

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高血圧の持論

「そうなんだよ。だからオレは1年間飲まされたクスリを、すっぱりやめたんだ」

わたしより若干若い彼は、突然饒舌に語り始めました。「クスリを飲むと良い感じの値になります。それはとても良いことなのですが、そうなると人間は努力をしなくなりますから、気を付けてくださいね」とわたしが云ったのがきっかけでした。

「人間として耐えられないんだよ。クスリを飲んで正常にしないといけないなんてことは本当じゃないと思うし、ワタシはそんなのは好かん。そんなものに頼らなくても、日常をきちんと生きておけば絶対に良くなるはずなんだ。一体、ワタシのやり方の何が悪いから、血圧が下がらんのかい? どうやったら良くなるのか教えてほしい」と彼は云うのです。

それだけ頑張っていても下がらないのなら、『体質』というものだから、現代社会に生きようとする限りクスリの助けがないと難しいと思います。「今の仕事をすっぱりやめて、どこかの山奥に篭って社会とのつながりを断って、自給自足、悠々自適、晴耕雨読の人生を送るなら、クスリなんて要らなくなると思いますけど・・・」と云ったら、「そんなことはムリだ」と一蹴されてしまいました。「それはおかしい。ワタシは何も悪いことはしていないのだ。運動も食事も睡眠もきちんと注意して生きているんだから、そんなワタシがそんな仕打ちを受けなければならない道理がない」・・・。

納得はしてもらえませんでした。「高血圧がずっと続いている方が圧力に慣れている。いつも低い血圧の連中は急に圧力が上がると慣れないものだからすぐに壁が壊れるかもしれないが、ワタシのように何十年も高血圧の人間は鍛えられているから大丈夫なんだ」と持論を展開して高血圧治療を拒んだ男性が居ましたが、わたしの説明に納得してもらえなかった二人めの御仁です。奇しくも、どちらも教職の方でした。

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高血圧治療、本当は?

中国成人の約半数が高血圧、うち7割は服薬なし

『35~75歳の中国成人において、ほぼ半数が高血圧症を有し、治療を受けているのは3分の1未満で、血圧コントロールが良好なのは12分の1未満であることが明らかになった。中国医学科学院・北京協和医学院のJiapeng Lu氏らが、約170万例の代表サンプル成人を対象に行った、住民ベースのスクリーニング試験の結果を報告した。』

Lancetで報告されたこの記事。中国の現状を表し、最後に『中国人のすべてのサブグループで、血圧コントロール率が低い集団が認められた。幅広くグローバルな戦略、たとえば予防へのさらなる取り組みや、優れたスクリーニング、より効果的で手頃な治療が必要であることを支持する結果であった』と書かれているのを見ながら、循環器科医なのにちょっとだけ違和感を感じています。中国人の食べるモノやあの大気環境が動脈硬化予防にどれだけ悪いかは想像できますが、一方で、痛くも苦しくもないのに金出してクスリを飲むなってことをしない国民性だとかいうことを考えれば、大して驚くデータではないように思います。それよりも、この自然歴に近い現状の集団から、本当に脳卒中や動脈瘤などの脳血管疾患が多く生じているのか? 高血圧が野放しにされていたり十分な降圧をしなくても、リスクはそう高くないと云うことはないのか? そこのところのデータはどうなのだろうか、という疑問。「高血圧は厳格な降圧治療すべきである」ということを前提に研究されていますが、これまで日本を含めて世界中で示されてきたエビデンスが中国人に本当に当てはまるのかは分からないのではないかしら。日本ではそれなりに降圧剤を飲んでいる人が多いのでもはや自然歴の研究は至難のワザです。アジア人と云う点では似ていても、生活習慣や食習慣、あるいは考え方まで全く違うのだから、日本人の常識を中国人にそのまま当てはめるわけにもいきますまいに、とふと思った次第です。

素人みたいなこと書いて、ごめんなさい。

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